第428章 私は本当に愛している、私と結ばれない彼女を(8)

時間は一滴一滴と流れ、日の出から日没、そして夜の帳が下りるまで、また一日が過ぎていった。

もう五日目に入ろうとしているのに、高橋社長からの連絡はない。このままでは、YCが潰れるだけでなく、すでに撮影が終わった『三千の狂い』も駄目になってしまうだろう……

田中白は携帯を手に、秘書室を行ったり来たりしながらしばらく悩んだ末、ついに窓際に立ち、森川記憶の電話番号を探し出した。

高橋社長と森川さんの関係は今、良好とは言えない。彼は高橋社長の本当の気持ちがわからないので、軽々しく森川さんに連絡するのは怖かった。高橋社長に知られたら許してもらえないかもしれない……しかし、連絡できる人はみな連絡してしまい、残るは森川さんだけだった。

YCは高橋社長の心血を注いだものだ。彼は高橋社長が髙橋家や教授の反対を押し切って一流大学を中退する決意を目の当たりにし、また20平方メートルの賃貸部屋からYCを立ち上げていく様子も見てきた……誰もが高橋社長の出自が良く、スタートが高かったと言うが、彼が創設したYCは紛れもなく無一文からの出発だったのだ。