第458章 一夜で有名に(8)

森川記憶は目を凝らして眠っている髙橋綾人をじっと見つめ、しばらくすると胸の中の重苦しさがようやく少しずつ和らいでいった。

病室内のエアコンが少し強く効きすぎていて、髙橋綾人の片足が布団からはみ出していた。少し気持ちが落ち着いた森川記憶は一歩前に進み、ベッドの縁に寄り、身をかがめて布団の端を引っ張り、そっと髙橋綾人の足を覆った。

彼女がまだ体を起こす前に、病室のドアが開いた。森川記憶が振り向くと、一束の書類と薬の入った袋を手にした田中白が入ってきた。

田中白も病室に人が増えているとは思っていなかったようで、数歩進んでから森川記憶に気づき、足を急に止めた。

森川記憶は道中で彼に連絡して髙橋綾人の病室番号を聞いていたので、彼は彼女が来ることを知っていた。そのため、ほんの一秒後には普段通りの様子に戻り、挨拶をした。「森川さん、来られたんですね?」