第458章 一夜で有名に(8)

森川記憶は目を凝らして眠っている髙橋綾人をじっと見つめ、しばらくすると胸の中の重苦しさがようやく少しずつ和らいでいった。

病室内のエアコンが少し強く効きすぎていて、髙橋綾人の片足が布団からはみ出していた。少し気持ちが落ち着いた森川記憶は一歩前に進み、ベッドの縁に寄り、身をかがめて布団の端を引っ張り、そっと髙橋綾人の足を覆った。

彼女がまだ体を起こす前に、病室のドアが開いた。森川記憶が振り向くと、一束の書類と薬の入った袋を手にした田中白が入ってきた。

田中白も病室に人が増えているとは思っていなかったようで、数歩進んでから森川記憶に気づき、足を急に止めた。

森川記憶は道中で彼に連絡して髙橋綾人の病室番号を聞いていたので、彼は彼女が来ることを知っていた。そのため、ほんの一秒後には普段通りの様子に戻り、挨拶をした。「森川さん、来られたんですね?」

森川記憶は軽く頷き、体を起こして数歩後ろに下がってから、小さな声で尋ねた。「医者は何と言っていましたか?」

田中白は森川記憶が髙橋綾人の容態について尋ねていることを理解し、ベッドの方へ歩きながら答えた。「少し栄養失調で、今は熱が高めです。医者は入院して点滴で栄養を補給しながら数日休養することを勧めています。」

髙橋綾人の家にはお手伝いさんがいて、会社には秘書がいて、三食すべて専門の人が準備してくれているのに、どうして栄養失調になるのだろう?

森川記憶は少し驚いた。「栄養失調?」

「そうなんです。」田中白は薬と書類をテーブルの上に置いた。「先月から、あの夜私が電話して髙橋社長が見つからないと言った時、後でバーから彼を家に連れ帰りましたよね?翌日目覚めた後、髙橋社長は会社に行き、その日から狂ったように毎日必死に働いています。計算すると、一日24時間のうち、少なくとも18時間は会社にいて、ひどい時には23時間にも達していました。彼はまるで疲れを知らない機械のようで、食欲もあまり良くなく、食べる量も少なく、時には一日中お茶とコーヒー以外は何も口にしないこともありました。この数日も会社に籠りっきりで、今日このようになってしまったんです...」

先月、田中白が彼女を探してから今まで、ほぼ一ヶ月が経っていた。この一ヶ月間、彼は毎日このように過ごしていたのか?