第562章 深い愛と彼との、思いがけない出会い（22）

でも今は……

森川記憶はしばらく躊躇した後、結局髙橋綾人の電話番号を入力することはなかった。記者たちが散る気配がないのを見て、少し黙った後、声を出した。「もう一度言いますが、今日はインタビューを受け付けません。皆さん、どうか道を開けてください」

彼女の言葉は、まるで海に投げ込まれた小石のように、何の波紋も起こさなかった。

記者たちの口から出る質問は、途切れることがなかった。

「申し訳ありませんが、私の母はこの件と何の関係もありません。できれば、母だけでも先に行かせていただきたいのですが」森川記憶は記者たちに妥協の意思がないのを見て、譲歩するしかなかった。せめて母親だけでも解放してもらおうと願った。

「森川記憶さん、私の質問にお答えください」

「森川記憶さん、このように話題を避けるのは、後ろめたいことがあるからではないですか？」

「森川記憶さん、……」

森川叔母さんと森川記憶の二人は群衆に囲まれ、押されて立っているのもやっとの状態で、すでに気分が悪くなっていた。

二人ともここに閉じ込められていては、どちらも身動きが取れない。最善の策は、一人がまず脱出して、警察に通報するか、会社に連絡するかだった。

森川叔母さんは森川記憶が何度も話しかけても記者たちが取り合わないのを見て、声を上げた。「私はあなたたちの業界の人間ではありません。どうか道を開けて、先に行かせてもらえませんか」

森川叔母さんの言葉にも反応はなかった。

森川叔母さんは眉をひそめ、再び口を開き、少し強い口調で言った。「道を開けてください。このまま私たちを閉じ込めるなら、警察を呼びます」

記者たちは明らかに森川叔母さんの言葉を気にも留めず、依然として森川記憶と森川叔母さんを水も漏らさぬように囲んでいた。

森川叔母さんはもう無駄話をせず、直接森川記憶の手から携帯電話を奪い取り、画面で「110」を押した。

目ざとい記者がこの様子を見て、すぐにカメラを向け、森川叔母さんと彼女の指先の携帯電話を撮り始めた。撮りながら質問もした。「森川記憶さん、あなたがお母さんに警察を呼ばせたのは、千歌さんのパフォーマンスを盗用したことに後ろめたさを感じ、逃げ出したいからですか？」