スマホの画面は、別のスターがインタビューを受けるシーンに切り替わった。
しかし森川記憶の耳には、まだ髙橋綾人の「友達の誕生日を祝いに行くんだ」という言葉が響いていた。
今日は自分の誕生日なのに...彼はテレビの授賞式に出た後、京都に戻るつもりなのだろうか?
そう考えると、森川記憶の体内で再び血が沸き立った。
そして、タクシーが停車した。
テレビの授賞式の人出が多すぎて、近くの道路は封鎖されており、通行証のない車は入れないため、タクシーは封鎖された交差点で停車するしかなかった。
髙橋綾人はインタビューを終えたばかりで、まだ会場を離れていない。今頃は駐車場に向かっているはずだ。
森川記憶は髙橋綾人に電話をかける考えを諦め、タクシー代を払うと、まるで100メートル走のように授賞式会場に向かって走り出した。