スマホの画面は、別のスターがインタビューを受けるシーンに切り替わった。
しかし森川記憶の耳には、まだ髙橋綾人の「友達の誕生日を祝いに行くんだ」という言葉が響いていた。
今日は自分の誕生日なのに...彼はテレビの授賞式に出た後、京都に戻るつもりなのだろうか?
そう考えると、森川記憶の体内で再び血が沸き立った。
そして、タクシーが停車した。
テレビの授賞式の人出が多すぎて、近くの道路は封鎖されており、通行証のない車は入れないため、タクシーは封鎖された交差点で停車するしかなかった。
髙橋綾人はインタビューを終えたばかりで、まだ会場を離れていない。今頃は駐車場に向かっているはずだ。
森川記憶は髙橋綾人に電話をかける考えを諦め、タクシー代を払うと、まるで100メートル走のように授賞式会場に向かって走り出した。
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駐車場は屋外で、照明は設置されておらず、四方は街路に隣接していた。街灯の光を借りて、かろうじて道が見えるが、中央に行くほど光は暗くなっていく。
髙橋綾人と田中白は比較的遅く会場を出たため、駐車場の車はすでに大部分が出発していた。
髙橋綾人の車は駐車場の真ん中に停まっており、周囲にはもともと停まっていた車はもう見当たらなかった。
光が暗かったため、髙橋綾人と田中白が歩いてきたとき、誰も車の近くに人がいることに気づかなかった。
車の前まで来て、田中白が車のキーを取り出してスイッチを押すと、車のライトが点灯し、その光が周囲の地面を照らした。そのとき初めて髙橋綾人と田中白は、運転席のドア横の地面にしゃがんでいる人を見つけた。
髙橋綾人と田中白は同時に足を止めた。
点灯した車のライトが地面にしゃがんでいる人を驚かせ、彼女はゆっくりと顔を上げ、髙橋綾人と田中白を見た。
ちょうど近くで車がエンジンをかけ、そのヘッドライトの光で、髙橋綾人と田中白は地面にしゃがんでいる人が誰なのかを確認できた。
髙橋綾人の隣に立っていた田中白は、周囲の空気が冷たく重くなったのを明らかに感じた。彼は本能的に隣に立っている髙橋綾人を見ると、その男の端正な眉と目は、厳冬の氷雪のように冷たかった。
千歌は顔を上げ、光と闇の境界線に立つ髙橋綾人の顔をしばらく見つめてから、ゆっくりと立ち上がり、髙橋綾人に向かって歩み寄った。