第560章 深い愛と彼との、思いがけない出会い(20)

森川記憶と森川叔母さんは同時に部屋の中を覗き込んだ。二人の女性セラピストが部屋を片付けながら話をしていた。

「見た目がいくら良くても何の役に立つの?人間性が悪いじゃない。千歌のパフォーマンスを盗用するなんて、本当に恥知らずね!」

「それだけじゃないわよ。さっき千歌と彼女の友達のSPAを担当したんだけど、彼女たちが森川記憶について話していたの。私生活が乱れていて、堕胎したこともあるって。それに計算高くて、表面上の無害そうな見た目とは全然違うって...」

森川叔母さんは突然足を止め、怒りの表情で振り返り、部屋に向かって歩き出そうとした。

しかし彼女が一歩踏み出す前に、森川記憶は母親の腕を引っ張り、前へ急いで歩きながら小声で言った。「彼らと言い争う価値はないわ。これも千歌の策略かもしれないし、私たちが怒ってあの二人のセラピストに詰め寄るのを待っているのかも。一度衝突が起これば、ネットに広まってまた醜聞の一つになるわ」

「でも、彼女たちが今言ったことを聞いてみなさい...」

「あなたが今言ったでしょう、彼らの言うことは彼らの言うこと、私たちの生き方は私たちの生き方だって」そう言いながら、森川記憶と森川叔母さんはフロントに到着した。

森川記憶はフロントの女性から渡された請求書を見て、間違いがないことを確認してから、銀行カードを渡した。

カード決済中、先ほど森川記憶について噂していた二人の女性セラピストが、ちょうど楽しそうに話しながら部屋から出てきた。

森川記憶は振り向いて彼女たちを見て、胸元の社員証番号をちらりと確認した。

「お客様、サインをお願いします」フロントの女性が請求書を森川記憶の前に差し出した。

森川記憶はペンを取り、サインしようとしたとき、突然何かを思い出したように顔を上げて尋ねた。「もし間違っていなければ、あなたの店では女性セラピストがクレームを受けると給料が減らされるのよね?」

「はい、そうです」フロントの女性は森川記憶が突然そのような質問をするとは思っていなかったようで、一瞬戸惑った後、笑顔で答えた。