第591章 深い愛と彼との、思いがけない出会い（51）

なぜあなたの言葉を信じなければならないの……

髙橋綾人の言葉が落ち着いてからしばらく経っても、森川記憶の耳にはまだその数文字が響いていた。

汗をかいた彼女は、夜風が絶えず吹き抜ける中、体に少し冷たさを感じていた。

しかし、髙橋綾人のその言葉が三度目にはっきりと彼女の頭に響いたとき、森川記憶は突然、まるで炎に包まれたかのように、内側から外側まで強い温かさが広がるのを感じた。

千歌はおそらく髙橋綾人がわずかな躊躇もなく、森川記憶を信じるという答えを彼女に投げかけるとは思っていなかった。狼狽した表情に一瞬の驚きが過ぎり、その後には言い表せない不均衡が胸いっぱいに広がった。

あの日、美容院で彼女が森川記憶に離間を図ったとき、彼女も同じように断固として「髙橋綾人を信じる」と返答した。今、髙橋綾人の立場でも、同様に森川記憶を信じることを選んだ。

この瞬間、千歌は自分がまるで道化師のように、あらゆる心思と手段を尽くしても、心の底で望む目的に達することができないと感じた。彼女は自分自身に腹を立てているのか、それとも森川記憶を妬んでいるのか分からなかった。目の前に立つ二人を見つめ、彼女の目の奥に突然、ほとんど凶暴とも言える光が反射した。「そう、あなたは私の言葉を信じなくてもいい。でも、髙橋綾人、事実は事実よ。あなたと森川記憶の間は、ずっとあなたの一方的な信頼に過ぎなかったのよ……」

髙橋綾人がすでにそこまで言ったのに、千歌はまだ諦めないのか？

もし先ほどの森川記憶がただ少し不機嫌だったとしたら、今の森川記憶は本当に少し怒っていた。

彼女が千歌にどう反撃しようかと考えていたところ、隣にいた髙橋綾人がすでに口を開いていた。冷静な声色の中に、かすかな後悔のない諦めが混じっていた。「私が彼女を信じるのは、私一人のことだ。彼女に私を信じてほしいとは思ったことはない。」

森川記憶の頭の中の思考は、瞬時に凍りついた。

彼女がまだ髙橋綾人の言葉から我に返らないうちに、髙橋綾人はすでに彼女を車の中に押し込み、そして自分も車に乗り込んだ。

田中白はドアを閉め、すぐに車に乗り込み、エンジンをかけた。

車が千歌の傍を通り過ぎるとき、森川記憶は思わず振り返り、後部窓から外を見た。