第43章 再び彼に会う1

頭の中はほとんど真っ白になった。

「そう、こちらが夏野暖香だ。暖香ちゃん、こいつは俺の親友の健太...」

「暖香ちゃん？」

夏野暖香はその場に立ち尽くし、周りの声が全く聞こえず、心は一瞬にして興奮と衝撃に包まれ、自分の目を疑った。南条陽凌が彼女の腕を揺すって、ようやく我に返った。

南条陽凌を見ると、彼の目には薄い怒りが浮かんでいた。

彼女は少し呆然としながら我に返り、「あの...」と言いながら、視線を橋本健太に移すと、目には霧がかかったようだった。

橋本健太も夏野暖香の反応に少し驚いたようだったが、それでも落ち着いて彼女に手を差し出した。

「暖香おばさん、はじめまして。夏野家のお嬢様が才色兼備だと聞いていましたが、こんなに素晴らしい女性だからこそ陽凌にふさわしいんですね。お祝いの言葉は少し遅れましたが、お二人の末永い幸せをお祈りします。」

彼の口調はゆっくりとして、声は大きすぎず小さすぎず、しかし一言一言が雨粒のように彼女の心に降り注いだ。

彼女は再び彼に会う日が、このような状況になるとは思ってもみなかった。

彼は彼女の前に立っているのに、お互いを知らない。彼はさらに笑顔で誠実に、彼女と別の男の幸せを祈っている。

世界で最も遠い距離は、生と死ではなく、私があなたの目の前に立っているのに、あなたが私を全く知らないということだ。

「あり...がとう」夏野暖香は彼の明るく澄んだ目を見つめた。カリブ海のように青く透き通ったその目は、彼女がずっと憧れていた場所だった。

しかし今は、対岸の火事を見るように、もう二度と届かないように思えた。

心が引き裂かれるような痛みを感じた。

彼の手は温かく力強く、指は長かった。夏野暖香は彼の手を握りながら、13歳の時のことを思い出した。うっかり隣の木下おばあさんの水差しを割ってしまい、おばあさんにモップで追いかけられた時、彼は彼女の手を引いて一緒に逃げた。二人は養護施設の裏の林まで走り、そして互いを見つめて笑い合った。

あの頃、彼の手はまだ小さかったが、それでも彼女の手より大きかった。ちょうど彼女の手をしっかりと握り、包み込むことができるほどに。

「陽凌お兄さん！」遠くから澄んだ声が聞こえ、夏野暖香が振り返ると、エレガントな姫ドレスを着た、明るい笑顔の少女が見えた。