第85章 【85】あなたに私を求めさせる3

夏野暖香は息ができないほど笑い、今は全く抵抗する力がなかった。

手首は南条陽凌の首にかかっていた。

夏野のお父さんと夏野の母、そして南条飛鴻がダイニングから出てきたとき、目にしたのは二人が絡み合っている光景だった。

一瞬、南条飛鴻の表情は非常に険しくなった。

夏野のお父さんは少し気まずそうに顔をそらし、夏野の母の顔には笑みが咲いた。

夏野のお父さんは南条飛鴻を引っ張って言った。「あのね、飛鴻、私の書斎に行こう。二人で一局どうだい？」そう言いながら、夏野の母にキッチンの片付けを頼んだ。

夏野暖香は会話の声を聞いて、夢から覚めたように、急いで南条陽凌を押しのけた。

南条陽凌は押しのけられ、ソファを支えて立ち上がった。目を上げると、三人が居間に立っているのが見えた。夏野暖香は地面に穴があったら入りたいほど恥ずかしかった。

しかし南条陽凌は少しも恥じる様子もなく、南条飛鴻を見て言った。「飛鴻、一緒にテレビを見ないか。」

南条飛鴻は体を硬直させたが、「いいよ」と言った。そして、夏野のお父さんの手を離し、こちらに歩いてきた。

夏野のお父さんと夏野の母は目を合わせ、目に諦めの色が浮かんだ。

両家の親は南条飛鴻が以前、暖香ちゃんと幼なじみだったことを知っていた。しかし暖香ちゃんは南条陽凌と結婚し、これは南条飛鴻に大きな打撃を与えた。

そのため、自分が最も尊敬する兄と対立することも厭わなかった。

かつて、南条飛鴻と南条陽凌は南条家で最も仲の良い兄弟だったのだ。

夏野暖香は気まずそうに服と髪を整え、果物の盛り合わせを飛鴻の前に押し出して笑いながら言った。「あなた...果物を食べて。」南条飛鴻は彼女を一瞥し、目に痛みと彼女には理解できない何かが閃いた後、大きく笑った。「うん。」

南条陽凌は彼女の隣で、彼女を腕に抱き寄せた。「暖香ちゃん、さっき見たいと言っていたチャンネル、僕が合わせてあげるよ。」

夏野暖香は彼の手を振り払ったが、彼はまた近づいてきた。

大きな動きをしないように、彼女も彼のままにしておくしかなかった。

「暖香ちゃん、今夜はあなたと陽凌は帰らないで、そのまま家に泊まりなさい。あなたはもう長い間帰ってきていないわ。」

夏野暖香は急いで言った。「やめておきます...私は...」