第107章 【107】南条陽凌と一緒に買い物1

南条飛鴻は怒りで髭を吹き、目を見開いて叫んだ。「南条陽凌！」

南条陽凌は彼を完全に無視し、直接暖香ちゃんを抱きかかえて出口へ向かった。出る際に芸子に、彼をよく見ておくように、何かあれば電話するようにと言い残した。

見ておくようにと言ったが、夏野暖香には分かっていた。実際、南条陽凌は芸子に彼をよく世話するよう頼んでいたのだ。

この兄弟二人は、本当に素直じゃない。

夏野暖香は口をとがらせた。

……

車に乗り込むと、南条陽凌の表情が一変した。

「俺が出かけるやいなや、お前はすぐに元カレに会いに行ったな」南条陽凌はハンドルを握り、冷たい表情で言った。

夏野暖香は彼に平手打ちをくらわせたい気分だった。

「あなたの頭の中にはそのことしかないの？」夏野暖香は負けじと彼を睨みつけた。

「さっき家ではもう明確に説明したでしょ？それに、南条飛鴻が怪我をしたのは結局私のせいなんだから、見舞いに行くのは当然じゃない？」

「家で話したからこそ、お前がおとなしくしていると思ったんだ！まさか俺が出かけるとすぐに彼に会いに急ぐとは思わなかった！」

しかも病院で七番目と引っ張り合って、怪我までした！もし素直に家にいれば、彼女は怪我をすることもなかっただろう！

夏野暖香は彼に完全に負けた気がした。

「南条陽凌、あなたの心は針の穴みたいに小さいわ！」

車は「キーッ」という音を立て、地面を擦りながら、南条陽凌が急ブレーキを踏んだ。夏野暖香は心の準備ができておらず、体が前に倒れそうになった。

「また何を発狂してるの！」夏野暖香は怒鳴った。

「俺に何ができる？」南条陽凌は意外にも笑い、片手で彼女の顎を持ち上げた。

「俺の心が針の穴のように小さいと言うが、お前の気性も腐った卵のように臭いじゃないか？」

夏野暖香：……

腐った卵？ふん、これはなんてひどい例えだ。

南条陽凌は窓の外に顎をしゃくった。「まだ朝食を食べてないだろう？」

彼女を朝食に連れて行くつもりだったのか？

言われてみれば、夏野暖香はお腹がグーグー鳴っているのを感じた。

食卓に座り、向かいの南条陽凌を見ながら、少し不思議そうに尋ねた。「仕事に行かないの？私と朝食を食べる時間があるの？」彼女は彼がそんなに親切であるとはまだ信じられなかった。