南条陽凌はまさに獣のようだった。
夏野暖香は彼の頭を押しながら「やめて……」と言った。
「愛していると言え!」南条陽凌は片手で彼女の顎を掴み、命令した。
「私は……あなたが嫌い!」彼女は罵った。
南条陽凌はふっと笑った。
彼は彼女の顎を持ち上げ、媚びた目つきの彼女を見つめ、その熱い視線は彼女を焼き尽くさんばかりだった。
「君は嘘をつけても、君の体は嘘をつけない……」彼は少し得意げに言い、再び彼女にキスをした。
夏野暖香は最後には抱えられて浴室から出された。
彼にどれだけ責められたのか、もはや分からなかった。
もう東西南北も分からなくなっていた。
……
夏野暖香は翌日、金田正元から教えられた場所に従って、撮影現場へ向かった。
撮影現場は彼女がテレビで見たことがあるものとほぼ同じで、あちこちに様々な衣装を着た俳優たちがいた。
様々な小道具や雑貨が隅に積み上げられていた。
カメラや機材が空中にあり、多くのスタッフが忙しく働いていた。
夏野暖香はスタッフの一人に尋ね、それからカメラの近くで金田正元監督を見つけた。
彼女は以前実際に会ったことはなかったが、テレビで彼の写真を見たことがあったので、一目で彼だと分かった。
金田正元監督も彼女を見つけた。
「夏野さん、来てくれましたね。こちらです」金田正元監督は立ち上がり、熱心に彼女に手を振った。
夏野暖香は少し恐縮した。
この金本監督はテレビでは年配に見えたが、実際はかなり若く、痩せていて、眼鏡をかけ、頭には日よけ帽をかぶっていた。
おそらく金田正元の反応のせいで、もともと彼女に全く注目していなかった他の多くの俳優たちも、彼女に視線を向けるようになった。
金田正元監督に重視される俳優は、きっと並の人物ではないだろう。
夏野暖香はテレビで見たことのある多くの顔見知りを見つけた。名前が分からない人もいれば、彼女がとても好きな人もいた。
特に松本紫乃は、今日古風な長いドレスを着て、お姫様のように、とても神秘的で美しかった。
もともと撮影中だったが、突然止まって彼女に視線を向けた。
夏野暖香は以前彼女が出演した『千里飛雪』がとても好きで、その中の片桐雪がとても美しいと思っていた。
以前は彼女と対面できる日が来るとは思ってもみなかった。
まして一緒に撮影するなんて。