南条陽凌も夏野暖香の顔色が青白く、とても苦しそうなのに気づいた。
本来ならばまだ彼女に付いてきてもらおうと思っていたが、ここ数日の彼女の特殊な状況を考えると、今朝もお腹を痛がっていたことを思い出した。
そこで、ただ冷たく側にいる従者に命じた:「若奥様を家に送りなさい。」
「はい、若旦那!」従者はすぐに恭しく答えた。
夏野暖香はショッピングモールを出て、新鮮な空気を吸いながら、橋本健太が南条慶悟を見つめる視線と彼の微笑みを思い出すと、一瞬にして涙があふれそうになった。
あんな優しい笑顔は、かつて彼女だけのものだと思っていた。
……
数日間、南条陽凌は姿を見せず、夏野暖香は彼が自分のところで満足を得られなかったから、きっとまたどこかの女と遊び歩いているのだろうと思った。
彼女には本当に理解できなかった、以前の夏野暖香がどうしてこんな男を好きになったのか。
夏野暖香はまた何度か病院に行って南条飛鴻を見舞った。
南条飛鴻の回復は順調で、数日もしないうちにまた元気を取り戻していた。
退院したいと騒いでいたが、結局南条陽凌の部下に病院に留められた。
怪我が完全に治るまで退院できない。
夏野暖香は南条飛鴻が不機嫌そうにしている様子を思い出して、思わず笑みがこぼれた。
帰り道、車はある大学の前を通った。
夏野暖香は突然思い出した、彼女は以前の街では、大学を卒業したばかりだった。彼女はもともとアナウンスを専攻し、テレビ局でインターンシップもしていた。
その後、南條漠真を探すために、大学卒業後にインターンシップの仕事を辞めた。
そしてこの夏野暖香も彼女と同い年で、大学を卒業しているはずだ。
ただ…彼女がどんな専攻だったのかは分からない。
ここ数日、彼女は考えていた、まず仕事を見つけて、自分の能力でお金を稼ぎ、そして自分のキャリアを築くことを。
彼女が少しずつ強くなってこそ、南条家との絡み合いから抜け出すことができる。
そして身を引く際に、夏野家も守ることができる。
夏野暖香は家に帰ると、あちこち探し回った。
ついに寝室の下の棚から、夏野暖香の卒業証書と履歴書を見つけ出した。
驚いたことに、夏野暖香は映画学院を卒業していた。
しかも全国で最も有名な映画学院で、大学2年の時にはフランスに留学までしていた。