こうして、一足飛びに出世することができる。
南条陽凌はもちろん、これらの少女たちの心を知っていた。
しかし、面倒を避けるため、彼は通常これらのメイドたちに手を出すことはほとんどなかった。
美しい子は、家に置いておいて、見て楽しむだけでよい。
それに、彼、南条陽凌は、女に困ることなど全くなかった。
メイドは南条陽凌に顔を上げられ、目が輝いた。少し恐縮しながらも、目には媚びるような色気が漂っていた。
なんてこと……普段は若様の世話をしていても、彼は彼女を一度もまともに見たことがなかった。
こんな完璧な男の世話を毎日できるだけでも、すでに至福だった。
もし彼の寵愛を得ることができれば、この人生は満足できるだろう。
「若、若様」メイドの声は柔らかく、懇願するようでありながら、甘えるような響きがあった。
南条陽凌は興味深そうに尋ねた。「君の名前は?」
「南、南部彩子です」メイドは目を輝かせ、顔は愛らしい花のように笑みを浮かべた。
まさか、若様が彼女の名前を尋ねるとは思わなかった。
通常、南条家で働く人々は、芸子と執事を除いて、みな番号で呼ばれていた。
そして今日、彼が自ら彼女の名前を尋ねるということは、もしかして……
南部彩子はそこまで考えると、思わず頭を下げ、極めて恥ずかしそうな表情を作った。
南条陽凌はうなずいた。
そして、皮肉げに目の前の女を見つめた。
彼は元々、今日はいらいらしていて、夏野暖香のせいで心がむずむずし、発散する場所がなかった。
この女は、また彼を誘惑しに来た。
しかし彼女は知らない、彼、南条陽凌には、常に自分の原則があることを。
最も嫌いなのは、部下の従業員が、媚びを売り、彼のベッドに上がることを妄想し、一足飛びに出世しようとすることだ。
だから、目の前のこの女のすべての小細工は、彼の目には極めて作為的で、反感を買うものに映った。
「南部彩子……君は、解雇だ」
こんなにも美しい顔立ち、セクシーな唇が、微笑みを浮かべながら、こんな冷酷な言葉を発するとは想像し難かった。
南部彩子は一瞬、呆然とした。
自分の耳を疑った。
さっきは……確かに……
「若、若様……何とおっしゃいましたか?」