第278章 【278】性別は問題ではない3

「飛鴻!」夏野暖香は矛先が違うと気づき、急いで彼の腕をつかんだ。

相手は大勢いて、もし本当に喧嘩になったら、彼女たちは不利になるだろう!

「バン——!」

「くそっ、誰のテリトリーか分かってないな!」瞬時に、テーブルの人々が沸騰し、「ガシャン」と皿が床に落ちた。夏野暖香が対応できないうちに、一団の人々が突進してきた。

南条飛鴻は素早く夏野暖香を横に押しやった。「先に行け!ここは俺が何とかする!」

向かい側の久我悠輝も後藤峰を自分の後ろに引っ張った。「下がって!」

二つのグループは、すぐに喧嘩を始めた。

屋台の人々は皆驚き呆れ、手にしていた食べ物を投げ捨て、悲鳴を上げながら四方八方に逃げ散った。

幸い南条飛鴻と久我悠輝は両方とも腕があり、何人か向かってきた者たちを素早く倒した。

夏野暖香は怖さで顔が青ざめ、人混みに押されてめまいがし、一瞬どうすればいいのか分からなくなった。

警察に通報する?

今通報しても、いつ来るか分からない。

南条陽凌を呼ぶ?

ダメだ、彼女はちょうど南条陽凌と喧嘩したばかりだ。もし南条陽凌が電話に出なかったらどうする?たとえ出たとしても、彼は今足を怪我しているから、来られないかもしれない。

やはり、まず警察に通報して、それから藤田抑子に電話しよう?

夏野暖香は入口からまた一団の人々が押し寄せてくるのを見た。彼らは手に鉄の棒を振り回し、南条飛鴻たちに向かって突進していった。

夏野暖香の心臓は喉元まで飛び上がりそうだった。

南条飛鴻と久我悠輝は寡勢で敵わず、南条飛鴻もそれに気づき、夏野暖香に目を見開いて叫んだ。「暖香ちゃん、早く逃げろ!」

夏野暖香は焦って右往左往した。

見ると、後藤峰も怖さで固まっていた。二人はここにいても邪魔になるだけだと思い、駆け寄って後藤峰の手をつかんだ。「早く行こう!」

後藤峰は夏野暖香に引っ張られて我に返り、二人は足を速めて外へ走り出した。

通りに出ると、夏野暖香はすぐに後藤峰の手を離し、携帯を取り出して電話をかけた。

「暖香さん、どうしよう、昱田くんは大丈夫かな!?」後藤峰は目を赤くして夏野暖香に言った。

「大丈夫よ……」夏野暖香の手は震えていた。ようやく、藤田抑子の電話につながった。