第217章 【217】二人が車の中で1

廊下の角。

橋本健太は窓の前に立ち、背の高いシルエットが陽光の中で、非常に優雅だった。

ただ、顔には少し哀愁が漂っていた。

「今日は、本当に申し訳なかった……」

「大丈夫です」

「あなたが無事で良かった。そうでなければ、私はきっととても後悔していただろう」

「気にしないでください」

「一つ言葉がある、今まで誰にも話したことがないんだ」

夏野暖香の神経は、緊張し始めた。

彼は彼女に何を言おうとしているの?七々のことなの?

「……」

「確かに、ユーラシア航空の墜落機の記録には、七々があの飛行機に乗っていたと示されている。でも、私はずっと感じているんだ、彼女は私から離れていないと」

「あなたの言いたいことは……」夏野暖香は目を見開いた。

「私は疑っているんだ、彼女はおそらく搭乗していなかった……あるいは、すべては誤解で、七々はまだこの世界のどこかで生きているのではないかと」

夏野暖香は息を飲んだ。

心臓が、かすかに震えていた。

「でも、彼女が飛行機に乗っていなかったという証拠はあるの?」

「すでに調査を依頼している……」橋本健太は夏野暖香を見つめた:「私は信じている、彼女はこんな風に私を置いていくはずがないと」

夏野暖香は体全体が硬直したようだった。

「すまない……こんなことをあなたに話すべきではなかった。でも、なぜか、誰に話せばいいのかわからなくて。あなたのことを思い出したんだ……」

「では今日のことも、彼女に関係があるの?」夏野暖香は息を殺し、心の動揺を抑えながら尋ねた。もしかして、彼女は見間違えていなかったのか。

今日、馬場で見たのは、確かに彼女にそっくりな人だったの?

そして、その人はなぜここに現れたの?

そして今日起きたすべては、本当に偶然なの?

次々と謎が夏野暖香の心に浮かび上がった;しかし、彼女はそれをどう解き明かせばいいのかわからなかった。

「すまない……」橋本健太は手で額を支え、ハンサムな顔に疲れの色が浮かんだ:「私は……」

「ピンポーン……」そのとき、夏野暖香のスマホが鳴り始めた。

夏野暖香はびっくりし、橋本健太も驚いた様子だった。

彼女はスマホを取り出し、画面に「旦那様」という表示を見た。

彼女の顔が一瞬で曇った。

いつの間に、南条陽凌の名前が「旦那様」になったの?