第237章 【237】帝様に何かあった4

藤田抑子が言い終わると、ドアを開けて素早く立ち去った。

夏野暖香は全身が凍りついたようになった。

涙で視界がぼやけていた。

彼女は自分がなぜ泣いているのかわからなかった。

藤田抑子の言葉は、彼女に大きな衝撃と驚きをもたらした。

彼女はこれまで、南条陽凌は独裁的なファシストだと思っていた。

横暴で、自己中心的で、傲慢な人物だと!

しかし、彼が部下の兄弟のために命を危険にさらすとは思いもよらなかった!

さらに、こんなにも多くの人が彼に忠誠を誓っているとは想像もしていなかった。

藤田抑子は言った、南条陽凌は彼女一人のものではないと。

彼は彼らの天であり、南条家全体の天だと。

そうであれば、南条陽凌に何かあれば、それは多くの人々の天が崩れることを意味する。

夏野暖香は壁に寄りかかり、一歩後ずさりした。

彼女は南条陽凌を独占しようなどとは考えたこともなかった。

南条陽凌に彼女のために何かをしてもらおうとも思っていなかった。

むしろ、彼との関係を早く断ち切りたいと思っていたほどだ。

しかし...現実は、彼女を予測できない方向へと何度も導いていく。

南条陽凌はなぜこんなことをするのか?

これは彼の性格とはまったく違う、あんなに自信に満ち溢れ賢明な南条陽凌が、どうして突然こんなに頑固になったのか!

夏野暖香は頭が重く、心も乱れていた。

彼は大丈夫だろうか?

夏野暖香がドアの前に立ち、手を伸ばしてドアを開けようとしたとき、自分の両手が震えているのを感じた。

なぜ彼女は緊張しているのだろう?

本当に、藤田抑子が言ったように、彼女がこのことで代償を払うことを恐れているだけなのだろうか?

でも...心のどこかで、もっと心配しているのは、それではないようだ!

夏野暖香がドアを開けると、顔を上げた瞬間、清潔感のある端正な顔に目が留まった。

橋本健太の大きな体がドアの前に立っていた。

彼の目は彼女を心配そうに見つめていた。

「大丈夫?」彼は小さな声で尋ねた。

夏野暖香は橋本健太を見た瞬間、涙が止まらなくなった。

涙があふれ出した。

そして彼女は自分を抑えられず、彼の胸に飛び込んだ。

橋本健太は一瞬体を硬直させた。

男の体からは淡い緑茶の香りがして、清々しく上品だった。