第240章 【240】暖香ちゃんはどこに2

数秒後、橋本真珠は惨めな姿で病室から飛び出してきた。

目を赤く腫らし、顔色は悪く、夏野暖香を見ると、歯を食いしばって恨めしそうに彼女を睨みつけた。

そして不本意そうに言った。「帝様があなたに会いたがっています……」

傍らにいた南条飛鴻は「プッ——」と吹き出した。

「あらら、ある人は本当に自分の分をわきまえないね！厚顔無恥とはこのこと、豚を殺す包丁でも切れないほどの厚い面の皮……今はどう？追い出されて、気分いい？」

南条飛鴻は片手で壁に寄りかかり、不遜な態度で冷ややかに嘲笑した。

橋本真珠は一瞬にして極度に恥ずかしくなり、その整った小さな顔が赤くなったり青ざめたりして、我慢できずに南条飛鴻の前に駆け寄った。

「誰が厚顔無恥だって言ったの？南条飛鴻、あなたは度を越えないで！」

最後には、悔しさで目が赤くなっていた。

「さっきは誰が度を越えていたのかな、人を罵るときは、自分の末路を考えなかったの？これを自業自得というんだよ！」

南条飛鴻は容赦なく言い返した。

「あなたは……」橋本真珠は腹立たしく、急に手を伸ばして南条飛鴻の顔を打とうとした。

しかし、南条飛鴻が反応する前に、橋本健太がすでに素早く前に出ていた。

大きな手で、橋本真珠の手首をしっかりと掴んだ。

「もういい、真珠、いい加減にしたらどうだ？」橋本健太は諦めと責めるような口調で問いただした。

橋本真珠は自分の兄さえも味方してくれず、皆が自分を笑い者にしているのを見て、居場所がなくなり、突然泣き出した。

「お兄ちゃん！どうして私を責めるの！」橋本真珠はすすり泣きながら叫び、口を押さえてエレベーターの方へ走っていった。

ずっと傍らで、どちらの味方もせずにいた南条慶悟はその様子を見て、ようやく前に出て、落ち着いた様子で言った。

「健太、心配しないで、私が彼女を追いかけるよ。」そう言うと、彼女の後を追った。

この時、夏野暖香はまだ病室のドアの前に立っていた。

病室のドアに向かって、伸ばした手は、なかなかドアを押す勇気が出なかった。

南条飛鴻はその様子を見て、前に出て、彼女の顔を見下ろし、優しい口調で言った。「暖香ちゃん、もし彼に会いたくないなら、私が彼に言ってくるよ……」