第291章 【291】七々、本当にあなた3

「松本平、私は髪を切る必要があるし、髭も剃らないと……そうだ、前回イタリアのデザイナーが私のために仕立てたオーダーメイドのスーツが届いたって言ってなかったか?それと、それと……他に何か準備すべきものはあるかな、結局これは何年ぶりの再会だから……」

松本平は、落ち着きなく緊張している橋本さんの様子を見て、胸の内がどうにも複雑だった。

橋本さんは七々さんを何年も探し続けてきた。

宙ぶらりんだった心が、ようやく落ち着き場所を見つけた。

興奮しないはずがないだろう?

「橋本さん、何も準備する必要はありません。あなたはこんなに素晴らしく、こんなに誠実な方ですから、あなたと七々さんはきっと幸せになれると信じています」

橋本健太は軽く目を閉じた。

数秒後、また顔を向けて松本平を見た。「松本平……俺は……夢を見ているんじゃないよね?」

松本平:……

……

夏野家に帰るため、夏野暖香は会社を早めに出た。

ついでにスーパーで健康食品を買い、芸子に電話をかけて帰って食事をしないことを伝えた。

「お嬢様……お姉様がお帰りになりました。私もご一緒させていただけませんか……」

「大丈夫よ、芸子、私一人で行けるわ!」夏野暖香は芸子に迷惑をかけたくなかった。

「構いませんよ……それに、一年以上お会いしていないので、私もお姉様に会いたいんです。どうか一緒に行かせてください」

夏野暖香は少し考えて:「わかったわ、準備して、運転手に迎えに行かせるわね」

「はい、はい!すぐに準備します!ありがとうございます、若奥様!ありがとうございます!」

夏野暖香は芸子に笑みを浮かべた。芸子は夏野暖香と夏野薔子が小さい頃から見守ってきたので、姉妹への深い愛情があるのは当然のことだった。

夏野暖香はそれを気にしなかった。

車が別荘の前に停まると、芸子はすでに入り口で待っていた。普段あまり着ない赤い上着を着て、髪を自分でまとめて髷を作り、全体的にかなり元気そうに見えた。

「芸子、こんな格好をすると、10歳は若く見えるわね!」夏野暖香は冗談めかして言った。

芸子の疲れた目に喜びが光り、笑いながら言った:「お嬢様がお嫁に行かれてから、芸子も久しく屋敷に戻っていませんでした。今回帰るのですから、あまりにみすぼらしくては具合が悪いでしょう」