第306章 【306】私に子供を産んでください5

「……」夏野暖香は鏡を支える手を強く握りしめた。

南条陽凌は整った服装で浴室のドアの前に立ち、中から動きがないのを見て、眉間にしわを寄せ、目に心配の色が浮かんだ。また気を失ったのだろうか？

「暖香ちゃん——！」南条陽凌は緊張して呼びかけた。

「出て行け——！！！！さっさと出て行きなさい！！！」中から突然、獅子吼のような叫び声が聞こえた。

南条陽凌：……

「奥さん、そんなに大声を出さないで、酸素不足になるよ……」

「ドン……」重いものがドアに投げつけられた……

^^

橋本グループ。

橋本健太は椅子から立ち上がり、目の前の松本平を見つめた。

「何だって？もう連絡が取れたの？明日の午後にカフェで会う約束をしたって？」

「はい、若様。」松本平は笑いながら言った。「七々さんはあなたの知らせを聞いて、同じように驚いていました。少し信じられないと思っていました。七々さんは今、地元にいませんが、できるだけ早く戻ってくるそうです。」

橋本健太はうなずき、端正な顔に、かつてないほどの輝きが広がっていた。

彼は胸からあふれ出そうな喜びを必死に抑えながら、笑って言った。「わかった。」

……

銀白のフェラーリが道路をスムーズに走っていた。南条陽凌が自ら運転していた。

夏野暖香がずっと道端の方を覗き込んでいるのを見て、思わず尋ねた。「夏野暖香、何をしているんだ？」

「あっ……そうそう、前のスーパーの入り口で、ちょっと止まって。」夏野暖香は道端を指さして言った。

南条陽凌は眉をひそめた。「何か買いたいのか？」

「そうよ……」夏野暖香は南条陽凌に甘く微笑んだ。「生理用ナプキンを買いに行くの！」

南条陽凌：……

額に数本の黒い線が浮かんだ。

「あなたの……生理が来たのか？」ある人は眉をひそめ、目を大きく見開き、信じられないという口調で言った。

夏野暖香は無邪気にうなずいた。「さっきちょうど……」

南条陽凌は夏野暖香の無害そうな様子を見て、心の中の怒りをどこにぶつけていいかわからず、急にブレーキを踏み、車を道端に停めた。

夏野暖香は前に飛び出しそうになったが、幸いシートベルトをしていた。

「夏野暖香、お前はわざと俺をからかっているのか！？」南条陽凌は夏野暖香の手首をつかみ、歯を食いしばって問いただした。

「そんなことないわよ？」