第408章 あなたは私が目をつけた獲物1

夏野暖香は元々気づいていなかったが、「もう検査したじゃないの？」と言おうとしたところ、声を聞いて思わず驚いた。よく見ると、白衣を着て眼鏡をかけたハンサムな「男性医師」は、佐藤陽介ではないか？

夏野暖香は顔を輝かせ、口を開こうとしたが、佐藤陽介の視線に気づき、すぐに傍らの芸子に言った。「芸子、急に紅署粉が食べたくなったの。買ってきてくれない？」

「紅署粉？」芸子は驚いた。「若奥様、でも...この辺りにはないと思いますよ。車に乗ってフードストリートまで行かないと買えないんです！」

「あら、芸子、急に食べたくなっちゃったのよ。お願い、買ってきてくれない？」

芸子は微笑んで言った。「走り回るのが嫌だというわけではないんです。ただ、ここにあなたの面倒を見る人がいなくなることが心配で...それに、紅暑は固まってしまいますし...」

「大丈夫よ、ここに医者がいるじゃない。タクシーで行けば、すぐに戻ってこられるわ」

芸子は夏野暖香がこんなにわがままなのを見るのは珍しかったが、何も言えなかった。ただ微笑んで言った。「わかりました。若奥様、何か具合が悪くなったら、必ず医師に言ってくださいね」

「わかったわ、安心して、芸子」

芸子が去った後、佐藤陽介は顔から眼鏡を外し、夏野暖香を見つめながら、少し皮肉を込めて言った。「数日会わないうちに、また自分をこんなにボロボロにしたのか？」

夏野暖香は恥ずかしそうにした。「私だってこうなりたくなかったわよ！あなたはどうしてここにいるの？」

佐藤陽介は背後にいた男性を彼女の前に連れてきた。

「こちらは辛島言志博士、内科の専門家で私の友人でもある。ちょうどこの病院で働いているから、彼に血液検査をしてもらって、あなたが毒に中っているかどうか調べてもらおうと思って」

夏野暖香は目を輝かせ、すぐに興奮して言った。「それは素晴らしいわ！ちょうどそのことで心配していたところなの」

辛島言志博士は口数が少ないようで、注射器と消毒綿を手に取りながら夏野暖香に言った。「採血の時は少し痛いですが、我慢してください」

夏野暖香はうなずいた。

「検査結果は急ぎで出します。約20分後には結果が出るでしょう」終わった後、辛島は言った。

「わかった」佐藤陽介は言った。