第431章 拭くたびにキスを一つ

園田警官はようやく重荷から解放されたかのように、顔に喜色を浮かべ、南条陽凌が車に乗るのを見送り、そして彼らの車が去っていくのを見送った。

「帝様……お気をつけて……」

ロールスロイスは安定して公道を走っていた。

窓の外には雪が舞い、車内は暖房が入っていたはずだが、夏野暖香はそれでも空気が一瞬にして零度まで下がったように感じた。

運転している南条陽凌の髪は風で乱れ、額には汗が浮かび、その端正な顔つきで道路状況を見つめながら、表情は極めて不機嫌そのものだった。

夏野暖香は両手を重ねて椅子に座り、横に少し身を寄せ、彼の低気圧に影響されないよう努めた。

彼の車をぶつけて壊しただけなのに、こんなに不機嫌になる必要ある？

南条陽凌は彼女の反応に気づき、陰鬱な目で彼女を一瞥し、胸の怒りを抑えながら歯を食いしばって言った。「どうした？今さら怖くなったのか？さっき車を止めろと言った時は、随分と強気だったじゃないか？」

「……」もし彼が後ろから彼女を呼び続けなかったら、彼女がそんなに緊張して木にぶつかることはなかったのに。

「夏野暖香、お前はさっきどれだけ危険だったか分かっているのか？」

「電柱で良かったものの、もしトラックが来ていたら、今頃お前はミンチになっていたぞ！」南条陽凌はさっきの光景を思い出すと少し怖くなった。さっき駆け下りた時、夏野暖香が気を失っているのを見て、手が震えるほど驚いた。

この忌々しい女、彼を苦しめるために生まれてきたのか！

「何も起きなかったじゃない……」夏野暖香は彼に叱られ、自分が悪いと分かっていながらも、うつむいて不満そうに小声でつぶやいた。彼女は死ぬほど怖かったのに、彼はまだここで彼女を叱っている。

「今は何もなかったが、もし何かあったらどうする？！夏野暖香、運転できないのに何を見栄を張っているんだ？」南条陽凌は大声で言った。

夏野暖香もすっかり怒りがこみ上げてきた。

南条陽凌を睨みつけて：「誰が運転できないって言ったの！私は……ただ慣れていないだけよ、それに、あなたが私を車に置き去りにしなければ、私が自分で運転する必要があった？」

南条陽凌は「シッ——」とブレーキを踏み、車を路肩に停めた。