そのとき、少女は突然手を伸ばし、柔らかな小さな手で銃の訓練で荒れた大きな手を掴んだ。
「行かないで……行かないで……」南条慶悟は色っぽい目で彼を見つめ、小さな声で懇願した。
藤田抑子の体は完全に緊張した。
少女はそのまま彼の腕を掴み、体全体を彼に寄せかけた。「行かないで……私を置いていかないで……」
そう言いながら、柔らかな唇が彼の冷たい唇に触れた。
藤田抑子は完全に硬直し、頭の中が真っ白になり、彼女にキスされるままになっていた。全身が火のように熱くなる。上着が脱がされ、ついに抑えきれなくなり、下にいる女性を激しく押し倒した。
……
朝、日の光が寝室に差し込んでいた。
ベッドに横たわる藤田抑子はゆっくりと目を開け、隣に横たわる少女に視線を落とした。
少し驚いた。
一瞬、瞳孔が引き締まった。
次の瞬間、顔色は真っ青になっていた。
昨夜……昨夜、彼は何をしたのか?
彼は南条慶悟を抱いてしまったのか?
藤田抑子の視線は、隣で雪のように白い腕をさらけ出している少女に落ちた。純白の頬には薄紅色が浮かんでいた。
しかし彼は思わず震えた。
頭の中には一つの考えしかなかった。南条慶悟が目を覚ましたら、きっと彼を殺すだろう。
だめだ……彼は死ねない、彼はまだ帝様と若奥様を守らなければならない……そして……そして、昨夜彼はすべきでないことをしてしまったが、これは彼の人生で最も衝動的な行動だったかもしれない。
しかし、なぜか、彼は後悔していなかった。
どうあれ、今は命を守ることが先決だ。彼、藤田抑子はどう考えても冷血な殺し屋なのに、もしこのように一人の女性に「パチン」とやられてしまったら、彼の一生の名声はどうなる?
彼は額の汗を拭い、布団をめくってゆっくりとベッドから降り、慌てて服を着た。
ドアのところまで来たとき、もう一度ベッドの上の少女を見て、歯を食いしばり、部屋を飛び出した。
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南条陽凌は手を伸ばして痛む額をさすり、手を横のベッドに置いた。
腕は空を切り、思わずゆっくりと目を開けた。
深い瞳で天井を数秒見つめ、横を見た。
彼女の姿はなかった。
南条陽凌は思わず起き上がり、洗面所を見たが、誰もいなかった。