第490章 心の中できっと嬉しくて死にそうだったでしょう

「暖香ちゃん、大丈夫？」南条飛鴻は心配そうに尋ねた。

この数日間、あまりにも多くのことが起きていた。彼女はもともと少し風邪気味で、そのため頭痛がひどかった。ただ首を振って「大丈夫よ」と答えた。

「暖香ちゃん、あなたは体が弱すぎるわ。私の綾瀬さんは一晩付き添っても平気だったのに、あなたが耐えられないなら、休みに帰ったほうがいいわよ！」橋本真珠は機会を捉えて皮肉を言った。

南条陽凌はドアの外のボディガードに言った。「若奥様を送って休ませてあげなさい」

夏野暖香はハッとして、何か不穏な気配を感じ、南条陽凌を見つめた。「私は大丈夫よ」

二人のボディガードがすでに恭しく前に進み出た。「若奥様、帝様を心配させないでください」

夏野暖香は不思議そうに藤田抑子を見た。

道理から言えば、彼女は今南条陽凌と離婚しているはずだ。南条陽凌はこのことを知らないのだ！

だから、彼には彼女の自由に干渉する権利はもうない。

しかし...ここには人が多すぎる。夏野暖香は何か言いたかったが、とりあえず我慢するしかなかった。

南条陽凌を一瞥し、歯を食いしばって部屋を出た。

南条陽凌は綾瀬栞を見て言った。「健太は大丈夫だ。こちらには使用人がいるから世話をしてくれる。お前も帰って休みなさい」

綾瀬栞は頑固に首を振った。「いいえ、私はここで彼に付き添いたいの...」

「彼は今休息が必要だ。お前がここにいても役に立たない」

「そうよ、綾瀬さん、あなた顔色が良くないわ。やっぱり休んだほうがいいわよ」橋本真珠が勧めた。

綾瀬栞はしぶしぶ頷くしかなかった。

「藤田、綾瀬を送って休ませてやれ」南条陽凌は命じた。

藤田抑子と綾瀬栞は同時に驚いた。

「彼に送ってもらう必要はないわ、自分で歩けるわ！」綾瀬栞は歯を食いしばって言った。

「綾瀬、言うことを聞きなさい」南条陽凌は厳しい表情で彼女を見つめた。今は気持ちが乱れていて、そんなことまで気にかけている余裕はなかった。

綾瀬栞は歯を食いしばった。「お兄さん...」

藤田抑子の顔にも少し困惑の色が浮かんだ。

「綾瀬さん、行きましょう...」

...

他の人たちが去った後、南条陽凌はガラス壁の前に立ち、病室で点滴を受けている橋本健太を見つめていた。

記憶喪失...

彼は本当に記憶を失ったのだろうか？