第515章 記憶の奥深くにいるあなた1

まさか、彼は彼女が七々だと知っているのだろうか?

しかし次の瞬間、彼女は首を横に振った。

あの時、彼は確かに意識不明だったはずだ!

「そうだね、本当に覚えていないんだ。ただ...頭の中にいつも七々という名前が浮かんでくるんだ...あなたは彼女を知っている?」橋本健太は彼女に真実を伝えたいと思ったが、口に出す勇気がなかった。それに、今の二人には多くの障害があり、彼女の心の負担を増やしたくなかった。

夏野暖香の胸が少し温かくなった。

彼は本当に覚えていないのに、それでも七々という名前を覚えている。

彼女は微笑んだ:「うん...あなたがずっと彼女を探していると聞いたわ。」

「じゃあ、見つけたのかな?」

「...たぶん見つけたかもしれないし、見つけていないかもしれない。」

「どういう意味?」

夏野暖香は黙った。

彼に七々のことを思い出させるわけにはいかない。そうすれば、蒋田雪のこと、自分が受けた傷のことを思い出してしまう。

「私たちは普通の友達よ、私もよく知らないの...もう遅いから、あなたも早く休んで。おやすみ...」

橋本健太は画面に表示されたメッセージを見つめた。

心が少しずつ締め付けられる。

七々、僕は結局あなたを見つけたのかな?

「おやすみ...」七々。

彼はこの二文字を打ち、携帯を胸の上に置いた。

夏野時子は画面を見つめ、唇の端に微笑みを浮かべ、瞼を閉じた。

...

夏野暖香は翌日会社に行った。

みんな彼女を見て喜び、クリスマスが近いので、金本監督が夜にみんなで祝おうと言った。

関口月子は彼女の手を引き、彼女と皇太子はどうなのかと心配そうに尋ねた。

夏野暖香は彼女を心配させたくなくて、以前と変わらないと言うだけだった。

実際、彼らはもう正式に別居状態に入ったのだろう!

ただ、南条陽凌が彼女に南条飛鴻の家に住むことを許したのは、彼女を自由にしたということなのだろうか?

夏野暖香にはわからなかった。

彼女は離婚の話をする勇気がなく、自分の焦りで南条陽凌にまた何かをさせたくなかった。

結局、今の彼女は彼の前では完全に弱者なのだから。

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南条陽凌は目の前の少女を見つめていた。

五年が経ったが、同じ顔立ちのままだった。