彼女は色っぽく彼を見つめながら言った。「陽介……あなたのためなら、私は何でもするわ……あなたは私の王様……」そう言いながら、彼の魅惑的な唇にキスしようとした。
佐藤陽介は不機嫌そうに顔をそむけた。
蒋田雪はあきらめず、彼の横顔にキスしながら、唇を少しずつ移動させ、首や胸元にもキスをした。
真珠のような歯で彼のシャツのボタンを一つずつ外し、息遣いはますます熱くなり、時折舌先で彼の露わになった胸の肌をなめた。
佐藤陽介は身動きひとつせず、まるで何の反応もないかのようだった。
蒋田雪は小さく鼻を鳴らし、大きな手で彼の下半身をなぞるように触れた。
「もういい……」佐藤陽介は目に抑えた欲望の光を宿し、タバコをくわえたまま、彼女の手をつかんで制止した。「そのテクニックは南条陽凌に使ってくれ。そのほうが俺は嬉しいぞ!」
「いやよ……」蒋田雪は彼の胸の小さなキスマークを舐めながら、甘えた声で彼を見上げて言った。「今は……あなただけが欲しいの……」
佐藤陽介は目を閉じ、ため息をついた。
体を翻し、蒋田雪を押し倒した……
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夏野暖香は仕事を終え、少し疲れた様子で会社を出た。
ここ数日、松本紫乃は会社に来ていなかった。彼女はそれが前回の出来事のせいなのかどうかわからなかった。関口月子によると、前回彼女が帰った後、松本紫乃はとても恥ずかしい思いをしたらしい。一言も言わずに帰ってしまったという。
関口月子はそう言いながら、目に喜色を浮かべていた。松本紫乃はあんなにひどいことをしたのだから、誰かに懲らしめられるべきだったのだ。
夏野暖香はもともとこれ以上この問題に関わりたくなかったが、今となっては、彼女と松本紫乃の確執は完全に決定的になったようだ。
しかし、これもいいことかもしれない。以前は二人は陰で争っていたが、今は表立って対立している。もし彼女に何かあれば、みんなはすぐに松本紫乃を疑うだろう。
それは逆に彼女にとって有利だった。
昨日の出来事があったため、彼女は元々橋本健太を見舞いに行くつもりだったが、今は気軽に病院に行く勇気もなかった。
そして南条飛鴻のところは……