第554章 私と一緒に滅びよう

鈴木和也は頷いた。「いいだろう……もう一度だけ、お前を信じてやる！」

南条陽凌はそれを聞いて、ほっと息をついた。

ゆっくりと彼らの方へ歩み寄った。

「帝様！」隅にいたボディガードたちは状況を見て、完全に表情を変え、不安と興奮を込めて叫んだ。

「黙れ——！誰も近づくな！」南条陽凌は振り返り、厳しく命令した。

「近づかないで、危険よ！」夏野暖香は思わず言った。気づかないうちに、涙が目から流れ出ていた。

彼女が死んでも一つの命に過ぎないのに、なぜ彼は危険を冒して一緒に死のうとするのか？

彼の命は、彼女の命よりずっと価値があるのに！

この男、頭がいいはずなのに、今は頭がおかしくなったのか？

しかし、南条陽凌は聞こえないかのように、断固として彼らに向かって歩いてきた。

彼が近づくと、鈴木和也はすぐに夏野暖香を突き飛ばし、ナイフを南条陽凌の首に突きつけた。

夏野暖香は「ドン——」という音とともに地面に倒れた。

雪の上に強く落ちたが、彼女は痛みを感じなかった。ただ心が激しく震えていた。

信じられない思いで振り返ると、南条陽凌も彼女を見つめていた。警告するような眼差しで、冷静に彼女に言った。「暖香ちゃん、下がって！ここから離れるんだ！」

夏野暖香は地面に伏せたまま、涙ながらに首を振った。「嫌よ……」

「早く！」南条陽凌は歯を食いしばり、彼女を睨みつけて大声で怒鳴った。

「南条陽凌、南条夫人に対するあなたの態度を見ると、私の見立ては間違っていなかったようだ。今日、あなたがまだ情に厚い人間だと信じよう！」鈴木和也は感心したように言い、地面に倒れている夏野暖香を見て、不気味な笑みを浮かべながら言った。「南条夫人、帝様があなたの命と引き換えに自分の命を差し出すというのなら、早くここから離れたほうがいい！私が手を滑らせれば、三人とも死ぬことになるからな！」

「早く行け！」南条陽凌は歯を食いしばって言った。

夏野暖香は鈴木和也を見て、目の前の人物が狂人だと思った。しかし南条陽凌は、自分の命をこの人物に委ねようとしている！

仕方なく、今ここにいても何の意味もないと悟り、彼女は地面から立ち上がった。

ゆっくりと後退しながら、涙で目が曇り、その朦朧とした視界の中で、南条陽凌の首から血が流れているのが見えた。彼は手を上げたまま、動かなかった。