第48章 金持ちは偉い

林薫織はどうすることもできず、藤原輝矢の指示に従うしかなかった。彼女が藤原輝矢にお金を借りているのだから仕方がない。お金を持っている人が偉いというのは本当のようだ。

幸い、藤原輝矢の臨時アシスタントをするのはそれほど難しくなかった。彼にお茶を出したり、日傘を差したりする以外に特に仕事はなかった。唯一林薫織を居心地悪くさせたのは、禾木瑛香がここにいることだった。

以前ほど禾木瑛香を見ても辛くはなくなったとはいえ、心の中には多少の煩わしさがあった。彼女を見知らぬ人のように扱うことはできなかった。

一方、禾木瑛香も彼女をあまり好ましく思っていないようで、午後ずっと調子が悪そうで、何度もNGを出されていた。これに関して、現場の人々は少し驚いていた。禾木瑛香は業界での評判が非常に良く、美しいだけでなく演技も非常に堅実で、多くの場合、撮影は一発OKだったからだ。

今日のような状況は実に珍しかった。

撮影現場のスタッフはイライラし始め、監督は禾木瑛香がなかなか調子を取り戻せないのを見て、撮影を中断し、彼女に家に帰って休んで状態を整えるよう言わざるを得なかった。

禾木瑛香の反応に、藤原輝矢はますます面白さを感じていた。彼は目を転じて遠くにいる林薫織をちらりと見て、セクシーな薄い唇が魅力的な弧を描いた。

おそらく最近は退屈することはないだろう。

その後数日間、藤原輝矢はアシスタントの代休を理由に林薫織を撮影現場に留めた。彼は芝居を見るかのように、冷ややかな目で林薫織と禾木瑛香の反応を観察していた。

興味深いことに、林薫織はずっと禾木瑛香を避けているようだった。禾木瑛香がいる場所には、林薫織は近づかなかった。一方、禾木瑛香はここ数日、心ここにあらずといった様子で、監督の顔色が豚の肝臓のように悪くなるほどだった。

藤原輝矢は興味津々だった。彼は確信していた、禾木瑛香とあの木のように無表情な女の間には何かあったに違いない。彼は表情を変えずに成り行きを見守り、面白い展開を待っていた。

ついに、禾木瑛香が自ら林薫織に近づいた。