第92章 こんなに優秀な男性は、掴まえておくべき

そうして、すでに十分に憂鬱だった藤原輝矢は、さらに憂鬱になった。ファンたちに取り囲まれた彼は、身動きが取れず、仕方なく松根に電話をかけた。

「ねえ、お坊ちゃん、あなたなんでコンサートホールに行ったの?」

松根は激怒した。藤原輝矢というやつはいつも彼女に面倒をかけるばかりで、自分から彼女に電話をかけてくるときは、必ろいいことがない。彼が彼女の弟でなければ、彼女は彼のことなど気にもかけなかっただろう。

怒りはあったものの、松根はそれでも人を手配して、藤原輝矢を「火の海」から救い出した。

専用車に乗り込むと、藤原輝矢はすでに疲れ果てていた。彼はマスクとサングラスを本革のソファに投げつけ、非常に憂鬱だった。今どきの若い女の子たちは一体どんな目を持っているのか?透視能力でもあるのか?こんなに変装しても見破られるなんて。