第178章 彼女と彼女、雲泥の差

「わかったわ。あなたがそう言うなら、いつまでもあなたに甘えているわけにはいかないし、それにこの件は最初から最後まで、私は損してないしね。」藤原輝矢とのカップル報道で、最近は彼女の露出も増えていた。

木村響子は立ち上がり、藤原輝矢に笑いかけた。「私、用事があるから先に行くわ。あなたはゆっくり養生してね。そうしないと、あなたのファンたちが心配するわよ。」

「気をつけて。見送らないよ。」

木村響子は彼を睨みつけた。「あなたって本当に薄情ね。あなたが怪我したって聞いて、私は遠くからはるばる駆けつけたのに。あなたときたら、引き止める言葉ひとつないなんて。」

藤原輝矢は悪戯っぽく口角を上げた。「『彼女』として、彼氏が怪我して命の危険があるなら、駆けつけるのは当然じゃないか。」

「そうね、当然よ。」木村響子は言い返せず、これ以上ここに長居するつもりもなかった。最後に藤原輝矢に投げキスをして、「じゃあ、愛しい彼氏さん、E市でまた会いましょう。」

林薫織は給湯室から戻ってきて、偶然にもこの場面に出くわした。彼女の目には、これが恋人同士の甘い言い争いに見えても不思議ではなかった。

彼女は静かに視線をそらし、木村響子が病室を出るとき、少し体を横に寄せて道を譲った。

すれ違う瞬間、彼女は無意識に木村響子を観察した。目の前の女性は背が高くスタイルが良く、肌は白く、顔立ちも非の打ち所がなかった。そして彼女から漂う自信と優雅さは、多くの女優たちが及ばないものだった。

自分を振り返ってみると、林薫織は内心苦笑した。彼女と木村響子は、一方は輝かしく目を奪うような存在で、もう一方は暗く光を失っている。まさに雲泥の差だった。

比べるまでもなく、彼女はすでに負けていた。

林薫織は自嘲気味に笑った。彼女が木村響子と何を比べているのか。今更、自分の立場を正し、自分の身分を認識していないのだろうか?

彼女はもう以前の彼女ではなかった。

藤原輝矢は林薫織がずっと俯いて、眉をひそめ、何かを深く考え込んでいる様子を見て、思わず尋ねた。「おい、何をぼんやり考えてるんだ?早く来て水を注いでくれ、喉が渇いて死にそうだ!」

その言葉に、林薫織はハッと我に返り、急いで前に進み、慌てて藤原輝矢のためにお湯を注ぎ、彼の前に差し出した。