藤原哲男から見れば、藤原輝矢はもう完全に救いようがなかった。彼は顔を引き締めて藤原輝矢に言った。「お前がどれだけその女を気にかけているかは知らないが、とにかく療養期間中は、この病室から一歩も出さない。私は禾木毅たちに話をつけておいた。彼らがお前を見張る」
禾木毅は藤原哲男の警備員で、以前は特殊部隊にいた。身のこなしも敏捷性も一流で、彼の目の前から逃げ出すなど夢のまた夢だった。
「兄さん、そんなことできないよ!」
藤原哲男は冷ややかに彼を一瞥して言った。「しばらくの間、おとなしく病院で療養していろ。午後には母さんが帝都から来る。お前のことで、彼女は心臓発作を起こしそうになったんだ。もう変なことを起こして、父さんや母さんを心配させるようなことはするな」
そう言うと、藤原哲男は彼を無視し、ドアのところのボディガードに何か指示を出してから、エレベーターの方へ向かった。ちょうどそのとき、松根がエレベーターから出てきた。
藤原哲男を見ると、松根のような風雲児的な女性実業家でさえも、一瞬にして威厳が消えた。彼女は小さな声で藤原哲男に挨拶した。「いとこ、どこへ行くの?」
「部隊に処理すべき事があって、一度戻らなければならない」男は少し間を置いて続けた。「輝矢はさっき看護師に対して癇癪を起こして、退院しようとしている。お前は彼と幼い頃から一緒にいて、関係も親密だから、彼をよく諭して、退院の考えを捨てさせてくれないか」
松根はもちろん藤原輝矢が急いで退院したい理由を推測できたが、それを口にはせず、うなずいて言った。「わかった、必ず彼をよく説得するわ」
松根が病室に入ったとき、病室はまるでイラク戦場のように散らかっていた。コップ、布団、枕などが床に投げ捨てられていた。
彼女はしゃがんで、床から枕を拾い上げ、ベッドの側に歩み寄り、怒るべきか笑うべきか分からない様子で言った。「こういうもので八つ当たりしても、何の役にも立たないわよ」
「姉さん、あなたも僕を止めるの?」