なるほど、これらの年月、林薫織が「ナイトカラー」で働いていたわけだ。彼女の学歴と能力があれば、どんなに悪くても、中小企業で普通の仕事を見つけられるはずなのに、ナイトクラブでアルバイトするまで落ちぶれることはなかったはずだ。
氷川泉は目を細め、事の顛末を考えていた。もし彼が「採用禁止」を出したのでなければ、一体誰がそれをしたのだろうか?
「東川秘書、調べてくれ、『採用禁止』は一体誰が出したのか」
東川秘書は少し困惑した。社長がこの件を調査するよう命じるということは、「採用禁止」は彼が出したものではないのか?
……
夕方、林薫織はいつものように贺集と一緒に半坂別荘に戻った。彼女の予想に反して、氷川泉もいた。ここ数日、彼は大抵遅く帰ってきていたのに。
林薫織が花の間に入ると、暁美さんがすぐに迎えに来て、笑顔で言った。「林さん、お帰りなさい。氷川さんも今着いたところで、あなたと一緒に食事をするのを待っていますよ」