電話を切った後、巻島一也は林薫織に恥ずかしそうに微笑んだ。「友達からの電話だったんだ。長く待たせてごめんね。」
「大丈夫よ。」
「こんなに待たせたから、お腹空いてるだろう。帰ろうか。」
言われて、林薫織は頷いた。確かに少しお腹が空いていた。
「ちょうどいいタイミングで、友達も来たんだ。後で紹介するよ。実は彼女、大スターなんだ。普段はクールに見えるけど、プライベートではすごくおちゃめで、とても付き合いやすいんだよ。」
大スター?
林薫織の脳裏にある人物の姿が浮かび、思わず言った。「私も知っている人がいるわ。表面上はツンデレで、傲慢そうに見えるけど、実は子供っぽくて、何をするにも気まぐれなの。」
「本当に?それは偶然だね。でも僕はね、そういう素直な人が好きなんだ。見栄を張って表と裏が違う人は好きじゃない。今度、その人も紹介してくれないか。」
林薫織の瞳の色が暗くなった。「私と彼はもう連絡を取っていないわ。」
「それは残念だね。」
二人は雑談しながら、別荘のリビングに入った。氷川泉と藤田逸真の他に、巻島一也が言っていたゲストも約束通り到着していた。
林薫織は、巻島一也が言っていた自由奔放な友人が木村響子だとは思ってもみなかった。そして木村響子に付き添ってこのパーティーに出席している男性が藤原輝矢だったとは。
藤原輝矢の横顔を見た瞬間、林薫織は雷に打たれたように、その場に立ち尽くし、動くことができなかった。この街はこんなに大きくて、何百万人もの人がいて、何百万もの家があるのに、なぜ彼女はここで藤原輝矢と出会うことになったのだろう。
「来たんだね?」巻島一也は林薫織の様子に気づかず、彼女の手を引いて、一歩一歩木村響子と藤原輝矢に近づき、木村響子に笑顔で紹介した。「こちらは私の新しい友達の林薫織さん。響子、君も隣にいる紳士を紹介してくれないか?」
「彼を知らないなんて、この世で君だけかもしれないわね。」木村響子は笑って言い、続けた。「藤原輝矢よ、私の友達。こちらは巻島一也、藤田社長の奥さんで、私の親友でもあるわ。」
「君も知ってるでしょ、私はゴシップなんて見ないから。響子、この人は本当に友達だけ?」巻島一也の視線は木村響子が隣の男性の腕をしっかりと掴んでいる手に流れ、意味深に微笑んだ。