第355章 私はあなたの弟であって、敵ではない

彼は顔を上げて向かいのダンスフロアを見た。明滅する光の中で、男女が入り乱れて踊っていた。

藤原輝矢は唇の端に妖艶な笑みを浮かべ、ハイスツールから降りてよろめきながらダンスフロアへ向かった。そのとき、一人の大柄な人影が彼の視界を遮った。

藤原輝矢は酔っていたが、来た人物が誰か分かっていた。藤原哲男に向かって笑いかけ、「兄さん、どうしてここに?」

距離があっても、藤原哲男は藤原輝矢から漂う強烈な酒の匂いを嗅ぎ取り、思わず腹立たしげに言った。「見てみろ、今のお前はどんな姿だ!」

「どんな姿って?俺はいつもこんな感じだろ?」藤原輝矢は不真面目に答えた。「華やかな夜の世界、酒と金に溺れる生活、人生は短いんだから、楽しむべきだよ。これでいいじゃないか?」

藤原哲男が冷たい表情を浮かべているのを見て、藤原輝矢はふらつく足取りで近づき、手を伸ばして藤原哲男の顔を強く摘んだ。「そんなに真面目くさってどうしたんだよ。まるでじいさんの生まれ変わりみたいだぞ」