第340章 彼女はただの日の目を見ない玩具に過ぎない

林薫織は病院にいるこの数日間、氷川泉は一度も姿を現さなかった。彼女はむしろそれを気楽に感じ、氷川泉が今すぐ自分に飽きてくれればいいのにと思っていた。

林の母を心配させないために、林薫織は仕事で出張中だと嘘をつき、数日後に戻ると伝えた。林の母はそれを疑うことなく、彼女の目には林薫織はまだ嘘をつかない娘のままだった。しかし、実際には既に別人になっていたのだ。

時々、林薫織自身も自分に詐欺師の素質があるのではないかと疑わずにはいられなかった。彼女はいつも自分を愛し、気にかけてくれる人々を欺いていた。どんな理由があろうとも、嘘は嘘であり、許されるべきではない。

同じ病院にいるため、林の母と偶然出会うのを避けるために、林薫織はずっと病室に閉じこもり、暇な時には本を読んだり、時々無意識にウェブページを見たりしていた。