第385章 氷川泉、あなたはそんなことできない！

以前なら、彼女はそれほど気にしなかったかもしれない。どうせ彼女の人生は既に台無しになり、希望など何もなかったのだから。しかし藤原輝矢が再び彼女に人生への希望を抱かせた。やっと未来への憧れを持ち、やっと勇気を振り絞って、藤原輝矢と一緒になったのに、どうして全ての美しいものと憧れがこうして壊されてしまうのだろう？

林薫織の唇は震え始め、しばらくして自分の声が聞こえた。「氷川泉……あなたはそんなことできない！」

「ふん、なぜできないと？欲しいものは手に入れる！」氷川泉は視線を遠くでボディガードに押さえつけられている藤原輝矢に向け、低く笑った。「珍しく君の元恋人もここにいるじゃないか。彼に観客になってもらうのは、これ以上ないことだ」

その言葉を聞いて、林薫織は信じられないという顔で目を見開き、全身が震え始めた。「氷川泉、あなた狂ってる！」

彼女は男の腕から逃れようともがいたが、再び肩をつかまれ、強く引き戻された。

林薫織は顔色が青ざめ、頭を振り続け、震える声で言った。「氷川泉、あなた……そんなことしちゃダメ、ダメよ、ダメ……」

以前なら、林薫織のこの様子を見て男は手を引いたかもしれないが、今回は違った。林薫織は地雷を踏んでしまい、激怒した男は、もはや少しも心を動かされなかった。

今、彼女と藤原輝矢の命は、この男の手の中にあり、男の思うままだった。彼女にどうすることもできなかった。

男は林薫織の恐怖を楽しんでいるようで、軽く彼女の顎を持ち上げ、薄い唇を彼女の耳元に寄せ、笑いながら言った。「林薫織、知ってるか？今のお前のか弱い姿は、人を犯罪に誘うんだぞ」

林薫織は急に顔を上げ、まるで怪物を見るかのように彼を見つめた。彼女は全力で肩の上の大きな手から逃れようとしたが、彼女の力は男の鉄壁のような強さには敵わなかった。

氷川泉は彼女をしっかりと抱きしめ、藤原輝矢の方向へ引っ張っていった。勝利者の姿勢で高みから藤原輝矢を見下ろし、低い声で言った。「二少、今日は申し訳ない、少し痛い目に遭わせてしまった。しかし、氷川からひとつ忠告しておこう。他人の女に手を出すものではない」

「薫織はお前の女じゃない！」

「ほう？そうか？何がそう断言させるんだ？どうやら彼女の体に私の印をつけなければならないようだな。今度また間違われないように」