第350章 5分間のフレンチキスはどう？

テーブルの上のコップが彼の服の裾に引っかかり、ガラスの割れる音とともに、リビングの雰囲気が一変した。しかし藤原輝矢はその時に冷静さを取り戻し、顔に浮かんでいた怒りの表情が一瞬で消え、すぐに不真面目な笑顔の下に隠れた。

「すみません、さっき響子に足を踏まれて、ちょっと反応しすぎました。続けましょう、続けましょう！氷川社長が大冒険を選んだので、皆さんは何か提案がありますか？」

「氷川社長と薫織にディープキスを5分間させるのはどう？」木村響子が突然発言した。

「それって、ちょっとやりすぎじゃない？」巻島一也が小声で言った。

「何がやりすぎよ、みんな大人なんだから、フレンチキス一つくらい何でもないわ。前はもっとすごいことやったわよ」木村響子は横にいる藤原輝矢に視線を向け、笑いながら尋ねた。「藤原輝矢、そうでしょ？」

藤原輝矢は腕を組んで黙っていたが、唇の端には不真面目な笑みを浮かべ、目は冷たかった。木村響子が彼が何か言うと思った瞬間、彼は林薫織をじっと見つめ、冷たい声で言った。「そうだね、みんな大人なんだから、フレンチキス一つくらい大したことじゃない」

林薫織は、藤原輝矢が自分をこんなに恥ずかしい立場に追い込むとは思ってもみなかった。彼が何も気にしていない様子を見て、彼女は藤原輝矢の心の中に自分の居場所がもう全くないことを確信し始めた。

彼は完全に自分のことを忘れてしまったのだ。彼女が誰と親密になろうと、彼には何の関係もない！

そのとき、藤原輝矢がまた口を開いた。「でも、このやり方はあまりにも陳腐すぎる。もっと新しいやり方をしてみない？」

「どんな新しいやり方？」木村響子が尋ねた。

「氷川社長の目を隠してみては？ここにいる女性全員が彼がキスする対象になる可能性がある。別荘のメイドも含めて」

藤田逸真はついに冷静さを失った。「私の妻は既婚者だから、含まれないよね？」

「もちろんです」藤田社長が妻を大切にしていることは有名で、藤原輝矢は邪悪な笑みを浮かべながら言った。「ただし...公平を期すために、藤田社長も犠牲になってもらわないと」

藤原輝矢の言う「犠牲」とは、藤田逸真も女装して候補者の一人になることだった。