第378章 鳥も糞をしない場所

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しかし、そのとき、隣の車の窓からノックの音が聞こえてきた。藤原輝矢は無視しようと思ったが、そのノックは止まるどころか、しつこく続いた。

藤原輝矢は小さく呪いの言葉を吐きながら、ようやく林薫織の体から身を起こし、毛布を林薫織にかけ、自分の服を整えてから車を降りた。

それは周辺を巡回していた花農家の男だった。その花農家は藤原輝矢を上から下まで眺め、あまり友好的でない口調で言った。「夜中に車をここに停めて、こそこそと何をしているんだ?」

藤原輝矢はその花農家の詰問するような口調を聞いて、さらに腹が立った。この花農家は彼らを花泥棒と勘違いしているようだった。田舎者の目が節穴なのか、彼の車を見ればわかるだろう。こんな車に乗る人間が、こんな花や草に興味を持つわけがない。