第390章 心は死灰のように

瀬戸麗はリストを書き、それを氷川泉の前に差し出した。「内服と外用、リストに書かれた用量通りに薬を使えばいいわ。私はまだ用事があるから、先に行くわ」

「運転手に送らせよう」

「結構よ、私は車で来たから」瀬戸麗は主寝室のドアまで行ったが、突然足を止め、振り返って氷川泉に尋ねた。「言い忘れていたけど、禾木瑛香が最近病院に私を訪ねてきたわ。彼女は最近、病院に来る頻度が高くなっていて、薬の量もかなり増えているようね」

男の顔色が沈み、長い沈黙の後、ようやく重々しく口を開いた。「わかった、ありがとう」

「礼を言わないで。ただ忠告したいだけよ。早めに決断して、禾木瑛香とはっきりさせた方がいい。そうしないと、善意からでも、結局は自分も相手も傷つけることになるわ」瀬戸麗の視線が林薫織の上に数秒間留まり、さらに続けた。「それに、あなたがこのようにはっきりさせずに、物事を明確にしないでいると、あなたの元妻はあなたを理解することは永遠にないでしょうね」

瀬戸麗が帰国した時、氷川泉はすでに林薫織と離婚していた。だから彼女は氷川泉の元妻に実際に会ったことはなかったが、最近、林薫織と藤原輝矢の一件が町中の噂になっていて、彼女も時々ゴシップニュースを見ていたので、林薫織の顔を覚えていた。

写真と実物には若干の違いがあり、写真よりもさらに痩せていたが、林薫織を見た瞬間、彼女はすぐに彼女だと分かった。

なるほど、先ほど氷川泉が自分に電話をかけてきた時にあれほど緊張していたのも無理はない。今考えると、おそらくこの冷酷無情な男の神経を揺さぶることができるのは林薫織だけなのだろう。

確かにあの言葉の通りだ。この世界では、どんなに強い人でも、必ず自分を手なずけることができる人がいるものだ。

瀬戸麗はこの言葉を残して、きれいさっぱり去っていったが、氷川泉を進退窮まる状況に陥れた。

これまで彼は物事を常にきっぱりと処理し、決して曖昧にすることはなかった。しかし、この件に関しては、彼は力不足を感じていた。一方には禾木瑛香がおり、もう一方には林薫織がいる。

禾木瑛香に対しては、返せない借りがあり、林薫織に対しては、彼は手放すことができなかった。