氷川泉は瀬戸麗の指示に従って、救急箱から数箱の解熱剤を見つけ、薬の説明書を注意深く比較した後、説明書の指示通りに行った。
林薫織に解熱剤を飲ませた後、氷川泉は眠気がすっかり消え、ずっとベッドのそばで見守り、一定時間ごとに林薫織の体温を測った。幸い夜明けになると、林薫織の体温はようやく下がってきた。
林薫織は自分がとても長い夢を見ていたような気がしたが、どんな夢だったのか思い出せなかった。
彼女はゆっくりと目を開けると、目に入ってきたのは氷川泉だった。男性はベッドの側に寄りかかり、眠っているようだった。はっきりとした輪郭の整った顔には、一晩経って青い無精ひげが生え、全体的にとても疲れているように見えた。
林薫織は氷川泉がなぜこのような様子なのか分からなかったが、深く考える気にはなれなかった。昨日のことを思い出し、彼女は嫌悪感を抱きながら顔を横に向けた。
この男性は、一目見るだけでも彼女の目を汚すようなものだった。
そして彼女のこのわずかな動きが、眠っていた男性を目覚めさせた。無意識に、彼は手を伸ばして林薫織の額に触れ、林薫織の熱が下がっていることを確認すると安堵したが、目を向けた瞬間、林薫織の憎しみに満ちた瞳と目が合った。
「触らないで!」
それを聞いて、男性は目を細め、二人の視線が交わる間、空気が凍りついたようになった。しばらくして、氷川泉はゆっくりと手を引き、淡々と視線を外し、低い声で言った。「お腹が空いているだろう?暁美さんにお粥を作ってもらった。」
そう言いながら、男性は暁美さんに電話をかけ、簡潔に指示を出すと、すぐにドアの外からノックの音が聞こえた。
「旦那様、林さんのために作ったお粥です。できたてですので、熱いうちにお召し上がりください。」
昨日、暁美さんは林薫織のことを一晩中心配していたが、朝になって氷川泉から粥を作るよう指示を受けて、やっと安心した。旦那様が自ら林さんのために粥を作るよう頼んだということは、昨日は旦那様が林さんを苦しめることはなく、林さんも旦那様を怒らせることはなかったということだろう。
氷川泉がベッドの側に歩み寄り、お椀からスプーン一杯の熱い粥をすくって、直接林さんの口元に運ぶのを見て、暁美さんは思わず嬉しそうに口元を緩めた。旦那様がようやく自分のプライドを下げて、林さんをなだめるようになったのだ。