第453章 藤原輝矢はなぜ産婦人科にいるのか？

妊娠維持のための注射は油性成分で、体に吸収されにくく、看護師はゆっくりと彼女の体に押し込むしかなかった。林薫織は以前、注射が最も苦手で、風邪をひいた時でも、薬を飲めるなら絶対に注射はしなかった。

毎回、妊娠維持の注射を打つ時、彼女にとっては耐え難いほど長く感じられたが、赤ちゃんの無事を思うと、彼女はそれを我慢した。これらすべてを、男は目にしていた。彼は自然と林薫織の心を読み取っていた。彼女はすでにこの子を受け入れる決心をしていたのだ。

この結果は、彼が夢にも思わなかったものだった。そのため、彼は思わず長いため息をついた。しかし、林薫織が注射で苦しむ姿を見るたびに、彼は心を痛め、自責の念に駆られた。

最初から、彼は林薫織に怒りをぶつけるべきではなかった。そうでなければ、彼女がこれほどの苦しみを味わうことはなかっただろう。

一ヶ月後、林薫織の各種指標はようやく正常に戻り、彼女は再び半坂別荘に戻った。ただし、今回は心境に変化があった。

彼女はもはや以前のように落ち込んだり絶望したりすることはなく、お腹の中の子供が彼女に新たな希望を与えていた。彼女は子供のために、おそらく自分の人生を新たに始めることができると思った。

しかし、この子を産むということは、これからずっと氷川泉と関わり続けることを意味していた。だが林薫織は、この男が自分の今後の人生に関わることを望んでいなかった。

彼女と氷川泉の間の亀裂は永遠に修復できないものだった。氷川泉が何をしようと、この子供の存在の有無にかかわらず、彼女が彼を再び愛することはあり得なかった。

そして氷川泉は、子供がいなくてもこれほど執着していたのだから、子供が生まれた後は、なおさら彼女を去らせることはないだろう。たとえ彼が彼女を解放すると約束しても、この子供については手放さないだろう。そのような結果は、当然、林薫織の望むものではなかった。

そうなると、彼女の前には一つの道しか残されていなかった。それはここから逃げ出すことだった。

今、彼女の体はようやく回復したばかりで、子供は何とか守られたものの、再び危険に遭遇する可能性も排除できず、彼女は子供の命を賭けて自分の自由を得ようとはしなかった。