第418章 自殺

男は顔を曇らせ、頷いて、警戒線を越え、一歩一歩と林薫織の前に歩み寄った。

彼女の顔には涙の跡が残っていた。長い間泣いていたのだろう。そして彼女の空虚で暗い瞳は、男が生まれて初めて恐怖を感じるほどだった。

彼はこれまで林薫織がこれほど絶望的で無力な姿を見たことがなかった。彼女はまるで魂を失った人形のように、その場に動かずに座り、心も魂も抜け殻のようだった。

男の胸が締め付けられた。かつてラベンダー畑での時でさえ、彼女はこんな風ではなかった。

男は口を開きかけたが、しばらくして自分の渋い声が聞こえた。「林薫織……」

林薫織は彼に応えず、依然としてその場で動かなかった。

それを見て、氷川泉は手を伸ばし、林薫織の肩を軽く叩いた。「林薫織、まずは母上を離してあげて。もう亡くなられたんだ。土に還らせてあげないと」

「土に還る?」林薫織は急に振り返り、真っ赤な目で氷川泉を冷たく見つめた。「何が土に還るよ?私のお母さんは眠っているだけ。ただ眠っているだけなの!」

「林薫織……」

男の言葉が口から出るや否や、林薫織に冷たく遮られ、彼女は沈黙を促す手振りをした。「しーっ!お母さんが寝てるの。邪魔しないで!」

そう言いながら、林薫織は目を伏せて腕の中の母親を見つめ、優しく彼女の額の血を拭き取り、小さな声で言った。「お母さん、きっと疲れたのね。大丈夫よ、先に寝ていて。後で食事の時間になったら起こすから」

贺集は林薫織の様子がおかしいのを見て、氷川泉に近づき、小声で言った。「社長、林さんはかなりのショックを受けているようです。このままでは、彼女はここで一日中過ごすことになるでしょう。人を上げて、彼女と林夫人を引き離した方がよろしいのでは?」

氷川泉は林薫織を深く見つめたが、首を振った。「必要ない。彼女には時間が必要だ。これを全て受け入れるための時間が」

氷川泉にはよくわかっていた。この出来事は林薫織に大きな打撃を与えた。彼女に母親の死を受け入れさせるには、周りの人間が強制することはできず、彼女自身が理解するのを待つしかない。

男は林薫織の後ろに立ち、黙って待ち続けた。時間が少しずつ過ぎ、周りで見物していた人々も少しずつ散っていき、担当の警察官と氷川泉の一行だけが残った。