林薫織は墓地で長い間待っていたが、それでも林の父は現れなかった。彼女は、おそらく刑務所側が許可しなかったのだろうと思った。だから父は来られなかったのだ。
彼女は雨に濡れた母の遺影を見上げ、胸が痛んだ。母は父を一生愛し、迷いなく父に一生寄り添ってきた。それなのに、最後には、彼女の葬儀に父は最後のお別れもできなかった。
「林さん、暗くなってきました。帰りましょうか?」暁美さんは林薫織に傘を差し掛けながら、静かに勧めた。
林薫織はうなずいた。父は母の死を知り、大きなショックを受けているだろう。今や彼女が家族の大黒柱なのだ。どれほど心が痛んでも、倒れるわけにはいかない。
林薫織がゆっくりと振り向くのを見て、暁美さんはようやく長いため息をついた。そして少し離れたところで黙って立っていた氷川泉も安堵した。彼は林薫織がここに頑固に立ち続け、去ろうとしないのではないかと本当に心配していた。