第499章 その汚い手を離せ!

高橋詩織は鍵師と管理人と一緒にアパートのドアを開けて入り、数歩も歩かないうちに床一面に広がる水たまりを目にした。彼らはすぐにこの「元凶」を見つけ出した。

高橋詩織が予想していたのとは少し違って、アパートが水漏れしていたのは、蛇口が閉まっていなかったり壊れていたりしたわけではなく、上階の屋上プールからの漏水が原因だった。

管理人は仕方なく、プールの水を完全に抜くことにしたが、プールの水を抜くのは一朝一夕でできることではなかった。

高橋詩織は暇つぶしに、無意識のうちにこのアパートを観察し始めた。アパートは2階建てで、屋上には露天プールがあり、プールの脇には小さな庭園があった。アパートの内装はシンプルながらも豪華で、モダンでスタイリッシュな雰囲気を醸し出していた。明らかにこの家の持ち主は若い人物のようだった。

彼女はゆっくりとプールの端まで歩み寄り、揺れ動く水面をじっと見つめていると、なぜか少し見覚えがあるような気がした。

彼女の脳裏には奇妙な光景がいくつか浮かんだ。彼女は目を細めて、それらの映像を捉えようとしたが、それらはすぐに消え去ってしまった。

彼女は軽く笑って、何を考えているのだろうと思った。ここでの用事が済んだら、家に帰って二度寝した方がいいだろう。

しばらくして、プールの水はようやく完全に抜かれた。問題が解決したので、高橋詩織はもうここで時間を無駄にしたくなかった。管理人たちと一緒に階下へ向かった。

リビングルームを通りかかったとき、高橋詩織の注意は、ふと大きなポスターに引き寄せられた。そのポスターは向かいの壁面をほぼ占めていたが、そこに映し出されていたのは、ぼんやりとした女性の横顔だけだった。

高橋詩織は写真愛好家で、長年の経験から見て、このポスターはプロの手によるものではなく、ポスターの女性もプロのモデルではないと確信していた。これは単なる思いつきで撮られたスナップ写真に過ぎないと彼女は断言できた。

スナップ写真をわざわざポスターにして家のリビングに飾るというのは珍しいことだ。この家の主人が…

不思議な力に導かれるように、高橋詩織は足の向くままにそのポスターに一歩一歩近づいていった。彼女はゆっくりと手を伸ばし、つま先立ちになって、指先で思わずその女性の頬に触れた。