第507章 あなたは氷川泉に興味があるの?

実は、高橋詩織がレーマンに行ったのは特に重要な用事があったわけではなく、ただ氷川泉というやっかいな存在から早く逃れたかっただけだった。しかし、すでにレーマンに来たからには、中村旭のオフィスに立ち寄って、新しい支社プロジェクトの最近の状況について少し理解しておこうと決めた。

「ほら、これは私が建築部門に急いで作らせた設計図だ。まず見てみてくれ」中村旭は一束の資料を高橋詩織の前に投げた。

高橋詩織は設計図をざっと見たが、頭が痛くなるだけだった。「私はコンピューター専門だから、こういうものはもともとわからないわ。見ても無駄よ」

「じゃあ何しに来たんだ?」

「暇だったからよ」高橋詩織は肩をすくめて、続けた。「それに、あなたの上司として、あなたが残業して働いているのに、私がのんびり休暇を楽しんでいるのは申し訳ないと思って、慰問に来たのよ」