第486章 彼女には彼を愛していると言う資格すらない

藤原輝矢は指輪を箱に戻したとき、突然携帯電話が鳴り始めた。

彼は冷たい目で携帯の画面をちらりと見て、少し躊躇した後、結局電話に出た。電話の向こうからすぐに女性の声が聞こえてきた。

「田中さんが田舎から地鶏を持ってきたの。夕食に来ない？」唐橋和子は探るように尋ねた。

「いや、夜は用事がある」

「そう。智也がさっきね、藤原おじさんにもう会ってないって言ってたのよ」

「今週の週末なら時間があるから、彼に週末に会いに行くと伝えておいて」

「わかった。じゃあ邪魔しないわ、お仕事続けて」唐橋和子は電話を切ると、瞳の色が暗くなった。

彼女はぼんやりとテーブルの上の新聞を見つめていた。その一面には藤原輝矢と別の女性が一緒に写っている写真が載っていた。女性は藤原輝矢の腕にぴったりと寄り添い、とても親密な様子だった。