高橋詩織はその声を聞いて、全身に鳥肌が立った。今どきの女性はみんなこんな風に話すのだろうか?
彼女はその声の方向を見ると、トイレで出会ったあの女性だった。さっきの意地悪で鋭い態度とは違い、今の彼女はまるで別人のように、水のように優しく柔らかな様子だった。
高橋詩織は眉を上げた。女というのは本当に変わりやすい生き物だ。女性の態度が急変するのは、たいてい男性が関係している。案の定、次の瞬間、高橋詩織は背の高い男性が彼女の向かいの席に座るのを見た。
角度の関係で、高橋詩織はその男性の横顔しか見えなかったが、その横顔をはっきり見た瞬間、高橋詩織は思わず眉をひそめた。この人は藤原輝矢ではないか?
前回の不愉快な経験以来、高橋詩織はこの男性に対していい印象を持っていなかった。彼の隣にまた別の女性がいるのを見て、高橋詩織の彼に対する印象はさらに下がった。
今日は何の日なのだろう、なぜ自分は次々と相性の悪い人たちに出会うのか。房原城治、それから氷川泉、そして今度は藤原輝矢だ。
実は、藤原輝矢がレストランに入った瞬間から、氷川泉は彼に気づいていた。藤原輝矢に対して、氷川泉はずっと警戒心を抱いていた。
四年前、彼は藤原輝矢から林薫織を奪ったものの、この男を林薫織の心から完全に消し去ることはできなかった。そして四年後の今、彼は同じことが再び起こることを望んでいなかった。
彼はナイフとフォークを置き、林薫織に言った。「食べ終わったよ、行こうか」
食べ終わった?こんなに早く?
高橋詩織は思わず目を落として氷川泉の前の皿を見た。皿にはまだ大きなステーキが残っていた。この男の食欲は少なすぎるのではないか?
しかし、彼女は氷川泉にもっと食べるよう勧めることはしなかった。氷川泉が早く食事を終え、早く帰ってくれることを願っていたからだ。
レストランを出ると、礼儀として高橋詩織は尋ねた。「氷川さん、お車はどこに停めていますか?」
「この辺は駐車しにくいので、一時的にあなたのマンションに停めました」
「そうですか...」
「駐車するときあまり注意していなくて、駐車場の入口を忘れてしまいました。高橋さんに案内していただけませんか?」
「問題ありません、どうせ同じ方向ですから」目の前のこの厄介者を送り出せるなら、いつでも同じ方向だ。