この状況を見て、高橋詩織は恐怖を感じずにはいられなかった。先ほどの赤井峰という男に散々な目に遭わされたが、その時の彼女は恐怖よりも怒りの方が強かった。
赤井峰が彼女をここに連れてきたのは、房原城治を誘き出すための餌にするためだとすれば、彼女にはまだ何らかの価値があるということだ。だから彼はまだ彼女に過激なことをするつもりはないだろう。
しかし、赤井峰は先ほど電話を受けて出かけたまま、なかなか戻ってこない。彼女はこの古びた木造の小屋で、一群のチンピラたちと二人きりで残された。詩織は心配になった。このチンピラたちが「美色」に目がくらまないとも限らない。
案の定、彼女の心配は杞憂ではなかった。しばらくすると、腕に刺青を入れた体格のいい男が席を立ち、大股で彼女の方へ歩いてきた。