この状況を見て、高橋詩織は恐怖を感じずにはいられなかった。先ほどの赤井峰という男に散々な目に遭わされたが、その時の彼女は恐怖よりも怒りの方が強かった。
赤井峰が彼女をここに連れてきたのは、房原城治を誘き出すための餌にするためだとすれば、彼女にはまだ何らかの価値があるということだ。だから彼はまだ彼女に過激なことをするつもりはないだろう。
しかし、赤井峰は先ほど電話を受けて出かけたまま、なかなか戻ってこない。彼女はこの古びた木造の小屋で、一群のチンピラたちと二人きりで残された。詩織は心配になった。このチンピラたちが「美色」に目がくらまないとも限らない。
案の定、彼女の心配は杞憂ではなかった。しばらくすると、腕に刺青を入れた体格のいい男が席を立ち、大股で彼女の方へ歩いてきた。
男は彼女の前にしゃがみ込み、彼女の顎を持ち上げて、不敵に笑いながら言った。「お嬢ちゃん、兄さんと一緒に遊ばないか?」
男は浅黒い肌をしており、笑うと黄ばんだ歯が一列に並んでいた。詩織はただただ吐き気を催すほど気持ち悪かった。この男が自分に悪意を持っていることは明らかだった。心中は不安でいっぱいだったが、表面上は冷静さを保とうと努めた。
「あなたは私と遊びたいの?」詩織は顎を上げ、軽く笑いながら言った。「あなたたちのボスが戻ってきて、あなたの皮を剥ぐのが怖くないの?」
詩織の声は大きくも小さくもなかったが、威嚇の効果はあった。案の定、チンピラの顔色が変わり、目の中の欲望が薄れ、代わりに怒りが湧き上がってきた。
「俺を脅してるのか?俺が怖がると思ってるのか?ボスは俺たちにお前を見張れとは言ったが、何もするなとは言ってないぜ。」
「そう?いいわ、赤井峰が何も言わなかったとしても、房原城治はどうなの?あなたたち、本当に房原城治を恐れていないの?言っておくけど、私は房原城治の彼女よ。それに彼のおばあさんに認められた孫の嫁なの。もしあなたが私の髪の毛一本でも触れたら、房原城治は絶対にあなたを許さないわ!」
これを聞いて、向かい側に座っていた別のチンピラが口を開いた。「四番、やめておけよ。この女は手ごわいぜ。女が欲しいなら、仕事が終わってから二、三人見つければいいだろ。今急ぐ必要はない。」