高橋詩織は氷川泉を病院に送り届け、病室で少し時間を過ごした後、午後に中村旭が自分を探していることを思い出し、その場を去った。
彼女が去る前に、氷川泉は突然彼女を呼び止めた。「明日の夜、時間ある?」
高橋詩織は振り返って尋ねた。「何かあるの?」
「もし予定がなければ、明日の夜一緒に食事でもどうかと思って。」
「あなたの怪我はまだ治ってないのに、また病院を抜け出すつもり?」
「食事くらいで、怪我に影響はないよ。」
高橋詩織は氷川泉の顔色を見た。血色も良く、問題なさそうだったので、それ以上何も言わず、静かに尋ねた。「どこで食べるの?」
高橋詩織が承諾したのを見て、氷川泉は思わず口元を緩めた。「その時に住所を送るよ。」
「うん、わかった。」
高橋詩織が去った後、氷川泉はベッドの横の引き出しを開けた。引き出しの中には、黒いベルベットの小箱が静かに置かれていた。彼は手を伸ばして箱を取り出し、「パチン」という音と共に開けると、まばゆいばかりのダイヤモンドの指輪が彼の視界に入った。