第607章 絶望

「どうして?どうしてそんなことが?」

小島紗月は体がぐらつき、医師はすぐに彼女を支え、口を開いた。「現時点では断定できません。白血球数の異常にはさまざまな原因があり、他の要因の可能性も排除できません。」

「そうそう、きっと大丈夫、きっとそうに違いない。」

林薫織は心の中で自分を励まし続けた。彼女は自分に言い聞かせ続けた。そんな偶然はないはずだ、薫理はとても元気で、体に問題があるはずがない。

確定診断のため、医師は薫理にさらなる検査を手配した。

検査が近づくと、薫理は眉をしかめて尋ねた。「ママ、お医者さんのお姉さんは、またたくさん血を抜くの?」

林薫織は優しく薫理の頭を撫で、うなずいて言った。「血を抜いて初めて何が起きているのかわかるし、適切な治療ができるのよ。ちょっと我慢してね、蟻に軽く噛まれるくらいだから、すぐに痛くなくなるわ。」

そのとき、マスクをした看護師が病室に入ってきた。林薫織は目を伏せ、視線は看護師が手に持っている箱に落ちた。その上には10本以上の小さな試験管が並んでいた。

林薫織はそれらの試験管を見つめ、先ほどの薫理の額からたくさんの血が流れたことを思い出し、思わずその看護師を呼び止めた。

「少々お待ちください。電話をかけて確認したいことがあります。確認してから採血をお願いします。」

そう言って、彼女は病室を出て、暁美さんに電話をかけた。

「もしもし、林さん?何かありましたか?」

「薫理が額に怪我をして、傷口からの出血が止まらないの。彼女は以前にも似たようなことがあったの?」

「何ですって?お嬢様が怪我を?林さん、どこにいらっしゃいますか?すぐに行きます。」

林薫織は暁美さんの言葉を聞いて、彼女の反応が過剰だと感じた。もし普通の表面的な傷ならこれほど緊張する必要はないはずだ。

彼女は胸が沈み、一語一語はっきりと尋ねた。「暁美さん、正直に教えてください。薫理は...何か病気なの?」

「い...いいえ、そんなことはありません!」

「まだ言わないの?医師はもう白血病の可能性が高いと言ったわ。暁美さん、こうなった今でも私に隠すつもり?」