第594章 彼の求心力は依然として

薫理は自分の願いが叶わないことを知っていた!次善の策として、テーブルの上のお菓子を指さし、「じゃあ、後でチョコレートを3つ食べたい」と言った。

林薫織は思わず微笑み、やはり子供らしい本能だと思いながら、頷いた。「うーん...この願いなら叶えられるわね」

二人はもたもたと外に出た。週末だったので、海洋公園はかなり混雑していた。子供を連れた大人たちや、デートを楽しむカップルたちがいた。

林薫織は薫理の手を引いて地下の海洋世界へと向かった。ガラス壁越しに、頭上や周囲は青い海の世界が広がっていた。

「ママ、あれは何の魚?」薫理は頭上で光り輝くものを指さして尋ねた。

「あれは魚じゃなくて、クラゲよ」

「水の中を泳いでるのは魚じゃないの?」

「水の中を泳いでいるものが全部魚とは限らないのよ」

「じゃあ...あれは?足があるやつは?」

「あれはタコよ、これも魚じゃないわ」

「じゃあ、あの長いのは?」

「あれはトラザメ、人を食べるのよ」

薫理は首をすくめて、小さな声で尋ねた。「子供も食べるの?」

「うちの薫理はこんなに可愛いから、トラザメもきっと食べる気にならないわよ」

薫理は胸をなでおろし、「よかった、よかった」と言った。

林薫織は彼女の可愛らしい表情に笑みを浮かべ、手を繋いで一歩一歩前に進んだ。

道中、薫理は好奇心旺盛な子供のように、歩きながら次々と質問し、林薫織は辛抱強く答え続けた。

彼女はこれまで、親子の時間がこんなにも楽しいものだとは知らなかった。これは記憶を取り戻してから最も幸せな時間だった。

海底世界を後にして、林薫織は薫理とイルカ館へ向かった。

到着が遅かったため、観客席はほぼ満席で、彼らは端の方で二つの席を見つけるしかなかった。

「ママ、あれがイルカ?」薫理はショーステージを指さして尋ねた。

「うん」林薫織は頷いた。

「イルカって本当に歌うの?」

「もちろんよ」

「どうしてイルカは歌うの?」

「彼らも仲間と交流しなきゃいけないからよ」

「へぇ、そうなんだ」

イルカショーはとても素晴らしく、終わる頃には小さな子は物足りなさそうで、林薫織にもう一回見せてほしいとせがんだ。

彼らが帰ろうとしたとき、彼らから少し離れた場所で突然騒ぎが起こった。