第120章 鬼谷閣の殺し屋——花仮面

「昨日の夜、橋本燃だけが私を連れ出したのは確かなのか?他の人は見なかったのか?」温井時雄は携帯を引っ込め、冷たい目で病床の前にいる山本煜司を見つめた。

「昨日出てきたとき、橋本さんはすぐに逃げるように言いました。私たちが数歩走ったところで、後ろから爆発音が聞こえました。廃墟の別荘の下に爆弾があるかもしれないと恐れて、立ち止まることなく逃げましたので、後ろにほかの人がいたかどうかは確認できませんでした。」

あの変異した女性はあまりにも強力で、温井時雄は確信していた。もし助けがなければ、橋本燃はあの変異女性に勝つのは難しかっただろう。

今回の経験で、自分は十分強いと思っていた温井時雄は、この世界にはまだ彼が恐れる強者が多くいることを理解した。

例えば、科学技術による遺伝子改変や、ウイルスによる自然法則の破壊など。

もし橋本燃が伊藤烈のような邪醫のように人としての底線がなく、彼が何度も橋本燃を挑発したときに毒を使われていたら、彼の墓の上の草はもう三メートルも伸びていただろう。

「新聞では橋本燃が重傷を負ったと書いてあるが、昨日見た彼女の状態はどうだった?」温井時雄の声には心配の色が混じっていた。

「私にもわかりません。彼女はあなたの手術をするために手術室に入り、出てきたときはあなただけでした。公式発表では橋本燃は当局に拘束されたとのことですが、今どんな状況なのかはわかりません。

しかし、私たちでも足がつかなかった沢田慕人を、彼女は一人の力で一網打尽にしました。彼女は無事なのではないでしょうか!」

山本煜司は今、橋本燃に対して敬意と恐れの両方を感じており、橋本燃が温井時雄と結婚していた三年間、彼女に嫌がらせをしなかったことを心から感謝していた。

さもなければ、彼は本当に橋本燃によって沢田慕人の実験室にあるような恐ろしい標本にされていたかもしれないと恐れていた。

山本煜司の言葉に、温井時雄の宙に浮いていた心は少し沈んだ。

山本煜司が言ったように、彼女は沢田慕人の巣窟さえも一網打尽にするほど強力だった。誰が彼女を傷つけることができるだろうか?

いわゆる公式の拘束というのは、表面上の言い訳に過ぎない。